毛毬俵 初編
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- 月夜房持前氣成選
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- 場所: 富山県
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- 月夜房持前氣成選
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- 日本語
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- 紅屋傳兵衞
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- ケマリダワラ
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- 東北大学
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歌社
毛球俵
書林宣明堂發行
歌
毛緋俵初編
月夜所大几撰
雪糖
荻野亭吉氏書蔵書
月夜廿一日夜房狂歌集序
古往今来星福物換焉今
之国顕者今語而非古也
過夜牙路方之於国顕荒雖
非無者相古龍而尤風調通
時後親藻従世改彼善相噺
出有之矣是以特以近証
一狂歌鳴馬逃近顔七同然
応之如響頃は医書の鳴
者之後遂成篇来請余弁
一言於其首年周尚古昔
中行之士酉不及見故男方
今狂者也適喜路方将
為進承尊於是乎序
南都陣人題
うへと
みしたる
池水によろつ
うつる代の
ちとせの亀
松か枝の
新樹園
此ひと巻手いがだりらとよべる事は栗の本に
よりていがぐりのゑみをふてみし齢字あひゝ
しゆゑなりさて此様者月夜道のうしは俳諧
哥に名たゝる浅草庵の字多幾に辛
ひさしてあらず名乎朱本又の名を路方
すめる庵かね浅秋菴又河でのなり所はか
びさやかにみゆる月夜房とよべり世々越のて
山にすめりさてはからずも初春の月さや
かなる夜彼河での広主乎とひし爾物済
のついでに此研の海の海の水よ国尓名たる川
の名によべる神通河の春の始のわか承る
にりおされは常此水平も土子といふかく幾々
てげにもと心べきしはさいつ頃より菴主の
筆もてまいだす顕の神妙なるはまことや都
好神過河の水平もちふとげにもくらの故与しは
てこそしれ今この川での広にて私撰の空出
くはへてよと安行ておのれも彼若水もて幸と
もしころは文政とゝせの暦ひらきそめ
むづきの雪の夜月影さやかに水にうつ
礼類ころならず出しとは
草の屋の助方なり
越立山麓鐫于上瀧不動境内
碑狂歌
長五尺余
横三尺
高二尺五寸
台石
横六尺余
花もみち青葉くちはに
そめたるはおとせはおつる
瀧のしら糸
浅草菴市人
十一一
狂歌毛毬俵初編月夜房持前気成輯
春之部
江都
歳内立春
墨用廬翁
氷柱とけて軒端の水の庭たゝきとしの尾にける春をうこかす
三木亭高見
あまくたる龍かすかたを天か代はとしの尾にみるあら玉のはる
雪迺屋月澄
としの内に春は来にけりすゝはきのほこりに客むともし火の花
皆黙斉素人
年の内のすのはやさを鶯のしたうち顔にさゝ啼やせん
愚連房袖垣
としの内に去年とことしの二柱神路山にもはるや立らん
立春
便百堂基輔
朝またきとしのをはりのとなりなるはるの立舞み河前歳
飛高山森偉齊
一四海波しつかになれも押鮎の今朝も雲井に登るめてたさ
渓林斎蔭住
久かたの雲井も鶴をかすませて今朝立そめる千代の初春
素人
素人
逆
神代より新の氷柱も玉鉾のしつくとなりて春は来にけり
目澄
すたつやけ朝は東西何草里かすみてみえぬ魚の石ふみ
葉名園間垣
日の出に今朝うちむかふひかし山烏丸よりすやたつらん
初春
蔭住
今朝ははや人の其葉のかと取ㇾてのほる初日のあし原の国
素人
いつも見る山に替りはなかり色替らさりしを千代の初春
飛高山玉敷廣庭
初霞今朝吹出して春風のすかたあらはす天つかいか染
相州磯部鶯歌亭年久
ふるとしの雪や氷の中を来しと今朝おもはれぬすのゝとけさ
袖垣
さほ姫のたてし露はおりはたの糸にひかれてすや立らん
基輔
とことはの蒲団の数もみつの朝あらたまりぬるよし原の里
越魚津住江木公
梅もけふ咲にそ花のみつの朝色をも香をもおしなへてよき
物事安棟
一経にある花見車にうない子のみつのはしめとあそふはつ春
基輔
山こえて来る初春のさきはしり脚もはやめに雪の下水
袖垣
一元日の寿くものゝ数々は口にはゝかる今朝のふとはし
越魚津元在業
きのふまてちりの浮世も今朝ははやはれてこはくのあり国の春
亥子並人
門松
あらたまる神代の春の門松はこれやにほんのはしめなるらん
若水竹基人
松風の音もことひく初空やくみにかゝれる今朝の若水
神垣
すも今朝くるま釣瓶の縄をもてたくりつけたる井戸の若水
森月齊
一淀川の車にくめとつきせぬはためしもふかき御代の若水
社頭若水
かんなきもみたらし川に天かれをくこゝなかれを上こしけ朝の若し
十日間間
玉琴のねの日の野辺の姫小松千代をひき出すすの粧ひ
高見
ためしとて野辺の小松を引みれはうこかぬ御代そねつよかりける
七草森月齋
七草
いとけなきわこも尋る仏の座またつみもらぬすの土草
夏木重伎
霞
浪の花折人もなき海原になとて霜のたちかくすらん
浅雪
一もゆる草の煙か露む山の根の雲の頭巾を抜かけてみん
月澄
古としのあくる一夜に十三里霞のひける淀川のふね
壺春麿
ひくかすみなかるゝ霞ゆとと来と舟にやつれん淀の川つら
窓月
見渡せはその原山も霞たちあるとはみえてみえぬはゝきゝ
蔭住
艸も木もめくませらるゝ大夫のいきのかゝると霞みゆれは
相州磯部
猿人真似
すなれや黒髪山はとしふれといさみたつたる朝夕露
千里深藪
鶯
一声はふりうりにせぬ鶯の高ねをはるのけさのゝとける
雪里住
鶯のなく一声にめをさまし月星のこる明かたのそら
花尾喜名
花尾喜名
あら玉の春にきて鳴初音とてはねをのしめのこしの鴬
袖垣
鶯のほう法華経にかきりしとしゝうよねんをとゝめてそ聞
基人
うくひ故の初ねは類のたねかしま谷間にひて今朝の一こゑ
蔭住
心を出て木こり小くみせしものか自由によめる尊の経
間垣
孟宗の竹の子よりも雲中にほり出しものゝ鶯のこゑ
並人
杉茶さへまた出ぬみ輪の里に来て春のしるしをつける鴬
静月齊袖法師
さゝの葉に月の落たる暁はほゝとなまたる鴬の聲
著著蔭住
若青
茶橋川若茶に雪は降つゝてあらふかたまにたまらさりけり
雪解
間垣
打絶てとはぬ不沙汰な山魚も雪解の水の音つれやせん
淡林浦
見渡せは一度にわらふ雪解にゑくほもみゆる不二の人宛
残雪
基人
一面に綿とみえしも山の端にもめん四五尺のこる白雲
葉名園
灸すえて見る山々も春の日に根きれもちかく雪の解残
櫻木基澄
越路へも一度に来たる春の今朝また雪の笠着たる山〳〵
梅
梅淡雪
四阿のまやのあまりの雲雫ほしときらめく軒の梅かえ
基輔
松風のことさら梅やさそふらん二十五けんも香に匂ふまて
深藪
おもひきや五つにひらく梅か枝に日も暮六つのかねをつくとは
月澄
咲そめてしらぬ朝寝の軒端へもたび〳〵匂ひおこす梅守
基人
あふ坂の関守神のみまへをも今は売りに通ふ梅か香
高見
そしるにはあらねと夜には星とみて声端の桜の花やひくらん
月澄
春の季に入かけんよくひらきたるはせにさるかな庭の梅かえ
雪仲国
一賤か家もけふの噺しは親子してわらふほと咲庭の梅か枝
並人
梅か香も洩て障子のこみすさてはすきまを考てこん
柳
春樹亭方翠
かたまらす猶むすほらすすの日に心解あふ香柳の糸
蔭住
梅さくら世はさま〳〵に咲はちるさかてめてたきすの青柳
敷島路川
もろこしをかけてくれともとしことに乙音はあひる青柳の春
基人
風の手にいとしらへても花も香もなくてことたる庭の青様
森月齊
一釈は終軒の柳のねむれるはこそかけてめやはれはならら
深靭
いと柳風はふくとも春の日のなかき詠をひきたしやせん
蔭住
高き家の御製もかくやおもほえん煙にきはふ新の青柳
間垣
手流する春の気色はさほ姫にまかせておける青柳の糸
高見
苦閑なる山のわらひのそか中にはらすちよれる青柳の糸
月澄
から文字をゝしへる蜘の原に似て柳は人にうたもよますか
藁花園
一五月にかてんのゆかぬさむさそとまゆをひそむる庭の青梅
石草素人
若草
所〳〵のこんの雪の消やらて山の根まても学はけむれる
臺人
すり火打うつの六辺も此ころおのれともゆるこその古学
神垣
はひこりて畑の埒の内外も水菜の中にもゆる若草
森月富
〽たをやめの若茶橋つゝ駒下駄に柳のはゝやふみあらけらん
御忌
師の恩をよろこふ寺のからかさはさゝてみのりそいつもひろかる
早蕨園菊人
子の愛にたき木をせるにおひなからこれさあわらひて出つと
高見
高見
め〳〵も雪の肌ぬき退くつの手をのひ出すすのさわらひ
彼岸有則
彼岸
日もなかくすの彼岸と菊苗のねもわけてよき鐘やきこえ
春山
春山青川親州人真似
すこれはわらへる花の一枝をもらひわらひの春の山〳〵
軒あや女
一針についぬひつけしきり仕立きれ〳〵かすむはやま袖山
春雨
一面にひける露はきりはらのこまかにふれる軒の春ゆ
蔭住
明石なる軒の糸水たるひにてさむさのよりももとる春面
並人
並人
磯の女の朝とく作る夕花をさくかとやみん宿の春雨
素人
燈火の花を見詰て四方山はおもひやらるゝする宿
葉山奥住
帰雁
みちのくの恩の里をしのはすに声あらはして帰雁に出
袖垣
一咲はちる美と悟りを開きてや見捨て愚智に帰るかり至
春月間垣
春月
よしの山初瀬も花の雪つまんはれ間たになきすの月影
飛高山新匠堂口弘
初花
薪おへる磯も木影にやすみ居る是や古今の序関の花
花
卯花雪邦
あすはまた蔵方を見すは山桜花にてけふは日くらしの里
飛舟津真弓百丈
さきかけの兄か箙の梅さけは追〳〵つゝく桃さくら只
有則
咲ころはいかつちのかみ風の神門に封しておく山のはな
路川
一此花の醇覚ころに咲かけてさとえに残る深山さくらは
並人
並人
一目にみえぬこの葉天狗や遊ふらんすは鞍馬のうす桜い
素人
馬に鞍くらまの山の盛なる使にほはす花の一えた
高見
禁酒の札も思はす酸臥てたつことかたき花の下かけ
間垣
蓬莱の山に桜そさとや姫たつねてみたき図のありかを
月澄
雪解の跡はす日の山さくらむつよりしらむ花のあけほの
神垣{
此奥は咲ぬといへと花守にうたかひかゝる峰のしら雲
路川
九重の露や花に遠慮してたて曳もなく晴て行らん
墓人
一盛りなる花にこゝろもたつか弓日のいる事もをしき木の下
素人
素人
一寒からて終日雪吹花の雪志賀のあらしのうかふ湖
一池辺花飛高山衣紋蔦丸
色みせてうつろふものは池の辺の小町桜の花にそありける
花時不心静間
咲ころは只うか〳〵と関守も花にこゝろはとゝめかねたり
櫻瓢亭
櫻
一墨染のなや今さらに咲時のころもはつさぬ西行桜
蔭住
斧の桶の朽しむかしを思ふにもきをこりてみむ花の真巻
袖垣
暮るまていさ見て行ん夕山のはかられはなき峰のひ桜
並人
蝶
名ところは花の香したふ旅にしてとまりさためぬ春の輩々
間垣
花衣仕立おそしと蝶々のたつてはたゝむおのか羽袖を
雛高見
蛙
大名のおとほり先の犬猫も郭戸にはならぬ御代のひな棚
桃
桃童人
ものいはぬ花と聞ゆへ咲桃のちるををしとてみな思ふらん
鮭
蛙久童亭
一鶯の今朝類よめは鍬もたて蛙もかへきすのあら小田
基人
基人
蛙鳴水の流はすくなもしまかりなりにも類をよみけり
菊延屋素行
春曙
見渡せは花のしら地のよしの山からすかよこす春のあけほの
安棟
四方山のよも明かたの鐘のねも霞にうつむはらのあけほの
基澄
基澄
藁葉こすゑ〳〵の霞むをも花かとそみるすのあけほの
有
しらみたる雲のはやしの鐘のねも言語につきしすの曙
並人
いつくをも露てみ井の鐘のこゑ花になりゆくはるの曙
野遊
すの野に遊ふをうなを雪間よりめはかり出してみる野辺の草
神垣
かこひより心を野辺に釜かけて手前勝手にすみれ指なん
百文
遅日
暮かぬる春のけしきは中着のひも長〳〵としめくによき
素人
素人
大日枝を二十重ねてのほるとも永き日の本二つなき山
一蔭住
永きかの宝つくしは春の野ゝのひるの玉にさわらひのかき
月渡
山吹
す雨にかさはきたれとものなして花折そてをぬらす山ふき
垣
袖垣
吉の川筏せぬ日も影さしてきのなかれ行やまふきの美
間垣
うらおもてともになかよき中垣はいはぬ色なる山ふきの花
素人
みのひとつなきはいかにと尋ねても口なし色の山ふきのはな
若鮎間間
若鮎
すははや貴舟の川も一面のかすみのあみをくゝるわか鮎
蔭住
神通ふ川の面は正直のかうへをのほるはゝの若あゆ
一枝川の近辺のほる若鮎はうつれる華を枝折にやせん
藤
名も高き松のあるしの老の浪打こすとみるしらふちの名
基人
春よりも夏へかけ樋の水かそも自由にたるゝ軒の藤浪
蔭住
酒をすく藤とやしれは立よらん上戸も花のたゝを見付て
素人
たくひなやす日のなかき藤原のあそんて暮す必そのとけき
春暮
一春暮有則
とゝめてもとまらさりとて梅桜みこしらへしてはるや送らん
三月昼
皆黙斎
降雨に花もましりてぬれつるはすと夏とのわかれ路の袖
間垣
行春の霞の袖をとめるともつきはなしたる入相のかね
蔭位
一けふきりのすの別と思ひなは鳳凰も出てとめてくれかし
題混雑泉近記
題混雑
佐保保姫の手仕業多きそか中にけふも霞のきぬを春風
素人
素人
昼見えて夜はみえさる風巾三輪の里より糸やはえけん
高見
あし曳の山のわらひはかゆ杖にけふ佐保姫のしりやうつらん
窓
桜狩連しあなひのさしつしてあれみよといふし背の山寺
商人
ほんのりと今朝は露を曳渡す名もおもしろる琵琶の湖
間垣
露より軒端にかける駒鳥はひくねのとけきすの日あたり
蔭住
此ころはよほとさむさしもさる沢のうらみもとけむ池の氷も
素人
難波かた角くむ声もいとひなく喰伏せて行すの若駒
月澄
一制の札立し御国さへちらするにいかてかゆひををらす鐘の音
墓人
子の日より和子らかつよく曳網に千代のねをやうすの竹こま
奥州川役東巴房為俊
味子鳥名のみかにくし行すをなせ呼とめんこれは猿松
南山同山南山高山新
其むかし人の恋すもかくやひめ竹にうまるゝ鶯のこゑ
ひなを出て来鳴る月日ほし大根土けのとれぬ京のうとひす
月夜房
いせこよみきの国みかん大和柿みなみよりこそ春は来にけれ
夏之部
高山
一首夏雀樹園
首夏
ちり残る花もまはらに薄衣さすかに夏のきこゝろそよき
文壺亭
梅さくらさかりし春もちりはてゝ夏のきに今風暮るらん
基輔
けふよりはよし野も花のふる里ととふ人まれに夏は来にけり
更衣並人
更衣
花の色はうつりにけり有けふよりは我身ふりよき衣更して
有則
きかえしは親のいさめのしつけいと御恩やあつきうすき袷に
素人
素人
花鳥の色音に遊ふ春過てけふは身軽のころも涼しき
高見
雨もふれ風もいさふけけふよりは花の香もなき衣来にけり
並人
餘花
一巻なる国の笑顔のおもかけはまた目にのこる楊貴奴桜
葉櫻基人
葉櫻
巻ある花の小町もちりはてゝみのなるはてはあはれ葉桜
花にきらふ風をも今はいとはしな葉の根のつよき塩竃桜
有ま則
雲の上の人の真似して類よむははゝかりあふき庭の桜木
実桜
同澄
まつまては花といひしかさ九こち花ちりてこのみやさひし山寺
新樹
一鶯の音入し跡の夏木立月日ほしさへ影もももさす
卯花
卯花有則
いつはりの月や雪とのぬれ衣を丸にまとひし庭の外の花
月澄
卯の花に使は来たり山里も望はいとはぬ馬にくらおけ
一商人
庭の面に見出しの山と思ふほと一軒につもる卯花の雪
窓
咲すともくきにはならぬ里人のしりてみて居る庭の卯花
郭公
江都
萩廼屋翁
後の世は郭公にそ生れきて我思ふまゝに鳴て聞かせん
高山
畳庵
さるおやのその月ほしもなか空やあめは八またにやまほとゝきす
素人
素人
有明の月ものこらすほとゝきす朝日山とや見て戻るらん
高山奥
つく杖もまつ身もつかれこちらからとかくかへるにしかしとそ鳴
碁人
墓人
聞はやとひるは待とも頼半ならて通はぬ三輪の山本とゝきす
蔭住
やみの夜はなかぬからすにほとゝき故月の生れむさきのここ
袖垣
和田の原なれにはせん八十嶋をかけたか小倉ゆ所とゝきに
日澄
一声はならさめかねつ姥捨や月かなかすかやまほとゝきす
並人
八千の数の外にはくたかけの八こゑきくまてまつ時鳥
早笛高見
はり程の菊もいつしか生立ちてつまのしつけのはとまたになき
同袖垣
一貢する宝の山田しつの男かつかみとりする御代の玉留
端午
並人
門々にたつるのほりの絵合やこれにはあやめさゝさるもよし
袖垣
磯の女のひけるあやめの永きねを御代のひさしにさして祝はん
五月雨
五月雨臺人
暗間なくけふもふり又あすか川渕も瀬となる五月酉の頃
月澄
一此ころの気色やゑにもうつされす筆さへ笠をぬかぬ五月雨
高見
かねのなる木はしらねとも五月向こはんてみゆる山里の川
夏月間間
夏月
下戸まても涼しきまゝに畳のかたふきやすき夏の月かけ
基人
基人
一堂はなる松葉のはりのすき間よりさして涼しき夏の月影
蔭住
らんひさのかた手にのそむ夏の夜の月の薬もとらんすゝしさ
袖垣
難波かた名におふあしの短夜は月にしはしのふしの間もなし
森月高
夏の秋は平家を思ふ須磨の浦浪に浮める月の涼しさ
日終
夏草
むすはんとしてのはす手のゆひよりもまたたけ高く生る夏草
並人
やさしくもめてにし花のつほみとて人手もさゝぬ庭の姫百合
素人
しつとして色にもみえぬ薩摩百合雨のあかりにさや割て咲
橋
蔭住
むらさめに花の雫もほち〳〵とむかしかたりをきかん橘
照射
さすほくし朽し草木の蛍かはけしてもとれる蝿のそゝ紅
〃袖垣
木下やみ照射やきえて射もとらぬしかのみならす道そあやなき
並人
月のいる山にさつをのともしして鹿をほしやと待わふるなり
量
花と見し蛍のかけも明かたはちりてや草の舟にかへりけん
商人
世の中はしのへと宇治の川の上にあらはれ渡る夏むしの影
素人
水清くむらかる池は影すみてちひろの底にもゆる夏むし
有
有則
ことたらて看主は手味噌手あふらに蛍集てふみやよむらん
月前堂
くらからぬ身にも追手のかゝる夜はあかるき月にしのふ夏むし
蚊遺
在熊州七尾
勝良山文
蚊遣して朔日ころの宵の月くゆるけふりに影もさゝせす
目終
みむろつくみ輪こそ杣の杉折てたいた蚊遣は夏のしるしか
蓮
菊人
泥をいてゝいやきよらなり白蓮のにこりにそまぬ花ひとの色
基人
極楽の花とてはともあさやかにうかみ上れる池のはちすは
氷室
貢する時をせりつゝ氷室守津いたちやすく水にかれはや
基人
基人
すへらきのみことはおもくけふまては水にはせしと各宝守山
夕顔
真白なる棚のほとりのちり捨場ちりけもみえぬ夕貌の花
夕立
脇さしのつかの間に降あとなから水もちのよき夏の白さめ
神垣
日最中は声をしきりに鳴蝉の暑さ宅ぬけし夕立の跡
素人
しはらくの間に麦の芥川書に胸てらす白雨の中
高見
夕立ゆ出合かしらにさすかさの蛇目を洗ふ程の涼しさ
蔭住
ゆふたちの道は出世をするかなる空に見えたる石ここしの龍
間垣
風雲のさはき出していかつちのよそになりゆくゆふたちの空
黒木山積
蝉
夏来れは蝉もたちくるわたり物みんともなけはからの名もあり
扇
安棟
遣ふ時柳の画まて涼しくて扇の風になひてとやみん
愚連房
絵書たる竹には虎も見えねともはかふ扇の風をおこせり
墓人
むすふ手に夏の暑さは忘れてもわすれかねたる水のつめたさ
一壺修
泉
遠慮なくあつさしのきと石清水いづまてすまん山の下菴
清水
掬すれはあつさしのきと石清水のめは手のうちかへき涼しさ
江都六樹園
納涼
春秋を何あらそはん世の中は柳のもとの夕すゝみふね
春丸
春丸
なよ竹の床机に松の下すゝみけふこそなと世のふこゝちすれ
素人
一川風に扇をうはいとられてもすゝしさ残る夕くれのそくれのそら
間垣
葛の葉の影に凌けは暑をもうらかへりたる風の涼しさ
並人
並人
工羅はわさを仕舞は暮て又月の水みる菴のすゝしさ
〃袖垣
ふところの汗もうせれは暑まてみなうはゝるゝ川のしら波
夏山
高見
時ならぬ雪かと峰をわけゆけはあしもとしらむ卯の花の山
御抜
御抜せし已は罪のぬけからとせみの小川になかに麻のは
有則
とし〳〵の夏の川辺は神代より流れてたえぬ御祓涼しさ
蔭住
思ひきや夏もやう〳〵こき付て貴舟の川に御祓するとは
袖垣
腹立の罪もけふよりあさのはに胸をさそりて流す涼しさ
高見
御祓川のそけはうつる姿にもこゝろのちりを洗ふすゝしさ
商人
題混雑
昏のたにつらていく夜かひち枕蚊くはかりにも猪はくるしき
蔭住
大仏の鐘のあつさに旅人も扇の風もとむる日さかり
有則
手枕の夢かとはかりするか路のふしのねかたの風そ涼しき
奥州為俊
賤か家もうつむ卯木の雲国は窓からぬけて通ふてう〳〵
木待直道
手折らんとすれはおそろしおにあさみ色は名に似ぬ国の唇
節黒古竹
鶯の音入しころも千部会にまた法花経の声そきそゆる
静月齊
釣たるゝ糸よりやさし菠の花におさるゝきしのさゝ浪
間垣
しら雲の花の綿ぬく夏ころもきなけよし野ゝ山本とゝきす
甚見
なる神に気もたましゐもきえ入を水くたさるゝ心すゝしき
商人
こし路なる竿にかけたる白妙の衣は雪とそみゆるむし干
月夜房
夏の起は宵にさしたる酒星も怒るめにさめす殊類月影
桜川丁
秋之部
高山
初秋
河匠堂
朝きよろ也なせるころもを吹揚ていもおとろかす秋のはつ風
神垣
時ふけふ暑きは口のくせ馬の耳にもそよとしれる秋風
同商人
商人
橘の花さら夏も香はてゝかはかりのこる今朝の初秋
間垣
かくとたに秋はきぬともしら露のたまけるほとそおとろかれぬる
隣齊
秋きぬとしらぬとしるく袖口にそれと告たる今朝の初風
七夕
素人
一短尺の五色の葉の空色にほしをもみえる七夕の竹
月澄
しち草をうけても星にかし小袖たとへあしたは又なかすとも
蔭注
七夕の梶の葉ことに露はあれてたまの契りはたゝ一夜なり
有則
かさゝきの橋のふしんや手伝んさゝくるうたのかんなつかひも
重伎
重位
別には天の川上出水せよいく夜もほしの御やと申さん
萩
江都
た
桑楊菴干則
むつましき中よ男鹿のふせはふきをきれはをきる萩の花妻
素人
物洗ふ妹か流のきよけれは陰なつかしききしの白萩
高山奥住
玉川のはきに玉なす露さへもなみたにまかふ秋の夕くれ
並人
吹あけの浜かと妹かきぬたちて沙崎の庭にみゆる白萩
女郎花
朝な〳〵露をふくみて愛家もこほれかゝれる野女郎は
在業
みをむすふよりあらはるゝをみなへしかつら男にとく花の下ひも
素人
こゝろをはつゝみかねてや女郎花きみはおもひのいろとみえけり
袖垣
ぬしはたれ心かた野ゝをみなへしたにや露のおきて守らん
素人
尾花
立のほる尾花の山を分行はこはくの帯にちりやつくらん
皆黙齊
皆黙齊
海面の気も見おろす但伝ひ尾花のなみをかふる秋風
素人
花野
野遊ひの日は西陣へかたむけと学のにしきも其侭にして
苅萱
類かるた取手や野辺の立田姫つひみたしたる風の苅萱
鹿
紅葉鳥色は思案の外ならめ峰よりみねへ通ふ妻乞
並人
吹笛に夜やふけぬらん時しりてねによる秋のさほ鹿のこゑ
皆黙齊
更行やふく松風も音強て鹿と聞える秋のさひしさ
愚連房
いとゝなを思ひそつもる月の雲にたつやしるしの棹鹿の声
高見
花よりも薄のまねく小松風にしもさためんをのゝさをしか
素人
素人
番喧し事の遺恨もなかり色あら珍しき初雁のうゑ
燈篭
一燈篭竹窓
細工にも孝ある雪の中の子はほつてすゝしき軒の燈籠
魂祭
久壺亭
なき玉もくへきや宵のかはらけの蜘手をみてもかねてしりして
虫蘭人
虫
声はかり草に残りてむさし野にとらへしむしはいつか逃水
三木亭
きり〳〵すつゝりの袖もさし置てねやの障子にはりとほし鳴
神垣
子の日せし遠里小野は秋も又ひきねそなかす松守のこゑ
秋田
玉川や野田のあたりは老か身もちとり足にて稲を荷はん
槿花
一在京ヲハリ橋菴田鶴丸
花のいろ昼めしまてはもちかねてさく静かほは茶腹一時
並人
薄衣きてはすゝしき秋の類のおひのねさめの朝かほの花
目修
其つるは庭の垣根の竹とりやおきなからみる朝顔の霞
墓人
基人
咲花に露を移せる紅粉猪口のさも愛らしきたなの朝興
路川
踊
小夜更て花のをとりも散已〳〵に行てや人の寝にかへるらし
駒匠
駒匠瓢亭
時なれやけふをかきりと雲井迄たちのほりたるきり原の駒
待宵月
きにかゝる雲の行ゑを十かへりも出てはみほのまつせ日の月
同州年久
月
老となることをは捨てみる人の月に寝ぬ目をさらしなの月
基鋪
唐人にみせたきものはふしよりも日本はれの月の日の出しほ
高見
高見
底まても掬する今宵わく泉汲とめられぬ水の月かけ
素人
一素人
沖津波おし来るときは雪の山花とひきゆく月の白妙
皆黙斉
曇りなき富士の高ねの真国なる雲ころはせん月の満丸
袖垣
影法を先へたゝせてもとらんとすれととゝまる月の大雪
澄
山鳥のおろのかゝみを見る月に人さへなかす姥すてのやま
間垣
雲きりやふくささはきの手前せんすみきつて出る月のさやけさ
基人
見て老となるとも恥ぬさやけるは山のはかけて出る月かけ
竹寛
からやまと照わたりつゝいさかな薄の露にやとる月影
風を起す雲の追手のかゝる夜も山のは逃て月はかくるゝ
十五夜月
花のころこゝろそらなる風雲もはれてうれしきみ王夜の月
花
月今宵桂のはなのまつさかりねにかへるへき人たにもなし
里住
こよびなる月のひかりの丸かゝみまるて一夜は曇りなき空
並人
並人
山のねに今宵こゝろの置ところ月のさしまの入相のかね
里住
雪花とこよひあらそふ雲もなしけにうたかひもかけぬ日影
重役
移りすむ菴も今宵の月影にともしほしとは思はさりけり
閏望月
このけしき年代記にもしるさなん八月二度の月の大雪
社頭月
一時まさに秋のえの嶋なまさかなうろこ照わたる月の広前
雁
袖法師
囲碁ならぬ黒石かちのなちの浜はるか沖よりわたる白雁
蔭住
一見捨行花にいひわけくらくとも月にあかしの浦渡る雁
窓
うたをよむ鳥はあれとも久かたの雲の上にきゝ雁のもろこゑ
春磨
一打あへぬ賤か小衣かりかねのたゝみかけてそ渡るみこしろ
並人
白菅や小すけか中もかきわけてまのあたりみゆ雁野のみ
袖垣
櫛形になりつゝ契やときはよりねをそろへ来る雁の一つら
澄
海人もこれはねたまん玉の月雁の羽袖にかくす思ひえ
鶉
秋萩の花妻よりやあはつ野にかた鶉なく声のあはれさ
碪
きくからに淋しき音やたましひのつちひとつなる秋の夜花の夜碪
久壺亭
槌音のごろり寝覚の手枕にあらうつゝかは里の夜きぬた
高見
としもまた若紫の春り衣うつやいたけのいねむりをして
西連屋
類や詩に作るものからから〳〵と二本のつちの衣うつ音
蔭住
小夜更て月のうさきの出るころ木賊小紋のきぬや打らん
墓人
かしましき音に寝むりもならの京かすかにひゝゝ里の夜綺衣
素人
月洩てふすまにわか影ほうし相手むかひの衣打まゝ
秋夕
入りさへ梢をつたふ山の端はあはれさまさる秋の夕これ
菊
菊便百堂
重陽のひをあてにして宇治川のあしろにくめる菊のませ垣
森月高
秋なれは骨はかりなる絵扇かなめはきとの名見なりけり
袖垣
斧の桶のくちなし色にたはむれて時のみうつる真盛のの
渓林斉
橋のむかしわすれて此秋はたもとに匂ふそで塩のきく
基文
きせ綿の花の一重に霜よけてけふ九重に匂ふしらる茶
並人
天かためをしからされは折枝になかくもかなと残す新きて
落鮎
脊をそろふすかたもやはり棹になりて竹のすのこにかゝるさひ袖
紅葉
基輔
大峯の霞に時雨にそみかくたあけのころもにまかふ紅葉は
安棟
一人の目に立田の川のかちにしき折〳〵御座れ紅葉盛りに
素人
いろ替へぬ常畳の松にましはりて紅葉のにしき山のまに〳〵
高見
鹿のこゑいとによる〳〵紅葉はのあけの衣を忍ふへかりけり
懸達房
風の手にいつの間にやら木々のはを染つくしたもしらぬひの色
蔭住
通天のはしをのそけは谷底にまた人はしを懸る紅葉は
久壺亭
山々のかたかけるかも一はけによほとそめたる峯の紅葉は
瓢亭
月も日も立田の山も秋のたちてあけになり行峰の紅葉は
露素人
素人
露
恋わひてしつか軒端に彳は無筆の袖に露の玉章
近喜一
いせの海浦のとまやに秋来れは露の玉得る海この乙女子
暮秋
一江都浅草菴宇舎
暮て行秋のひと日の藤豆もはひまつはれよ名残おもはゝ
同断同湊林高
行秋をこゝにとゝめて二つ三り木すゑにのこる木守のかき
皆黙斉
長き夜の寝もの語はつきるとも秋はつるとは思はさりけり
袖垣
ちりそめし一葉の頃そしのはるゝけふきりとなる秋の別路
基人
宇治川の瀬々に紅葉はかゝれともよとむともなく暮て行秋
日澄
秋もはやこよみの末にちり残る紅葉のひをもわすかなるらん
素人
蕗茗荷野はさま〳〵にみゆれともこともせすに秋は暮けり
有則
はら〳〵と散し木の葉の斧の手も秋はつるとや思ひしらるゝ
九月画
間垣
おしつよく秋とゝめたき一夜銀翌より冬にあれると思へは
並人
並人
日や兼にあけし障子の九十日さらりと立て行秋のくれ
江都福繁門
けふくるゝ秋のわかれもかなしさのたねとなりたる垣の朝かほ
題混雑
奥州為俊
野に寝れは親そなつかしうはたまの方くろかみを撫る徳慶
越四隅潤木齊
たつ山にあの間の月の山ふかみいてゆゑありてわきてさやけき
双峯高
月今宵ひとり歩行の芋売もこよひはかりは宿も定めす
瓢箪菴
一廿ツ文
世の中の人には葛とよはるともしたはふ蔓の身こそやすけれ
間垣
暑かりし夏も八つしかくれ竹のよのなかくなる秋の鹿笛
久壺亭
秋も立て行とそいかつてしかけてもとゝまりかぬる木々の紅葉は
越四潟
越四潟瀬
石
一茲にものをいひたき野の中の尾国に袖のみゆる親風
葉名園
さひしさは猶更いたといか栗のふりもむかれぬ秋の夕くれ
並人
紅葉はの凌しとあれと秋あさくたつたの里にまたむらみゆる
峯高
照わたるこよひの月のしら波も風もしらねと吹上ケの浜
加州金澤
西南宮
さらしなのふらきためしは捨置て月みの留主に姨をたのまん
豊後日田
同同医亭舎栗
秋の野は見て居聞てをり絶す子学のにしきむしのはた音
豊後舎
豊浚舎栗
茶にあらてにほふ朝日の出はなをもほふし籠たる宇治の川霧
花ぬりのすのなかめにまけそせぬいろもよし野々染紅葉は
将秋輔
◯磯の子か松はかきたる砂浜になみのかたちをのこすはつ雪
紀安麿
明石かたあはの土ふねにとゝつさへめもとに汐のうかふ月かけ
よみ人しらす
琵琶の音もきこえぬ浦はうつ網のめさしか袖をひかむ秋風
日夜房
としよれは秋風さむし我あたまはけしかれとはおもはぬものを
冬之部
初冬
信州塩尻
二本房
水鴨は滝にゆへとものほる日のあしの短き冬は来にけり
高山
隣斉
いつのまに冬や狐のなすの野に今朝は花かとみするはつ霜
間垣
案内とてなけれとふゆは北風をとなみにこたふ今朝の宮けち
基人
長月の日数もきのふさる田彦神の御留主に冬は春にけり
蔭住
一枝の花をこはれてをしけなく今朝おりそめる庭のはつ霜
江都万歳逢義
時雨
村時而軒に引たるいとみつはつまとに音のたゝき納豆
渓木高
見渡せは花ももみちもなきものを何を時雨の山めとりして
袖垣
とふ人もなくてたきらす釜のねも誘ふ時雨のいと淋しき
葉名園
念仏せぬ神路山にそくる珠数の百万遍も時なふりけり
基本
鉄砲の火縄はきえつゐのこ雲山をめくりて又もしくるゝ
霜
霜素人
普請する里の社の神の留主あさ〳〵霜のふとはしら立
基人
棹鹿のふすゐもみえす今朝は只をきたるものは霜にさりけり
落葉便百堂
落葉
志賀の山こす人もなき冬枯は落葉をかこにかきつめてけり
枯野
まねかねはとなりの秋やとほさかる時上への尾花は槙はてにけり
愚連房
百姓の枯野と舟はみえねとも薄のほさきのこるをかしさ
氷
弓のつるすくに狐のわたる時すはや水のはりつめにけり
瓢亭
〽寒き日をかさねてや今朝薄衣こほりにはりもみゆる谷川
蔭住
むつの花ふるの社やみたらしは亀甲なりに氷みゆらん
間垣
冬されは槙にし蓮のしもと葉もこほりてつきし池の返道
皆黙斎
一櫛けする柳かれても水の面こほりて泥の鏡さやけき
久壺亭
こほる池のみきはも左甚五郎一寸はかり木の葉ほりこむ
冬月
すはのうみ冬やきつねの先かけに月の氷もはへ渡りけり
日澄
夜をふけて山の花もつむ雪になをあはれそふ姥類の月
基人
食
寒き夜にさむさはいとゝますら男か身はゝのあはぬあさて小倉
袖垣
暁をつける聲さへしらさりきこゝろよくぬる鶏の毛ふすま
千鳥
同千鳥瓢亭
節磯のきしによる浪よるさへも通へはかよふ妻なしちと孝
広庭
むら干鳥ちりとこたへて鳴声のこゝは隣泊の玉川のさと
水鳥
水島高見
涼とる池に遊へるみつとりも冬にひつくりかへるさひしさ
基人
平テ家のむかしもかくな小夜更て夢おとろかす池のみつ鳥
恩連房
つるきてふ羽をもかくして漢信のあし間をくゝる池のをし鳥
蔭
蔭住
世の中は曇らは上もれ時雨空かゝみの池にあそふみつとり
深林高
網代
ふるこよみ着たるふすまの網代守ひをやいらひて還渡る薬
京都花蔭亭畔主
霰
はら〳〵とおへるあられは風花のちりにしあとのみにやあるらん
蔭
こし路なるあたかのせきは今もまたすか笠をうつ敷はらつく
同酒好舎由泉
酒好舎由泉
塩鮎を山宗もしこむすしめしのはらつくはかり初あられふる
幸久
初雪
客よひにやりし使を待うちは花とみる間にきゆるはつ雪
雪
便百堂
あしひきの山ふところの景色には手のいれられぬ雪のまくれ
竹倉
うたかへは是も雪かとみよし野ゝやまとちふさとけふの大雪
窓
ふりさしてゆひをてはへる寒口さや無筆の窓の空のあかるさ
間垣
踏こみておもはすのひる下駄のをもつめたく思ふ庭もせの雪
袖
袖垣
月とみて趣向する聞に子供等か兎をつくる庭のしらゆき
素人
朝日さす六つの窓よりむつの花ちれは教化とともにとけなん
月澄
するかなるふしのけふりはいさしらす雲はむかめにたつ山のみね
開路雪
開路雪菊人
守人のしら川夜に寝わすれて空もゆきゝもたまる関の戸
雪中雁
雁かねも棹をなしつゝ越るなりみふねの山の雲のしらなみ
雪中燈
管仲か雪のふることしたふりは丁児をさきへやる馬枕灯
霙
〃実溪林富
花とふるならは四五日なら柴の枝やたはめて水雲つむらん
炭竈春麿
炭竈
空かとも又うたかひの立けふりいまをさかりと桜すみかま
蔭住
おもかけのかはらて小野ゝすみかまのたとへけふりにかきりありとも
並人
小町てふ桜のさえた細けれはさてよはけなき山野ゝ枝すみ
間垣
ますら男か深山にすめは一筋のけふりもほそき炭やきのわさ
袖垣
藤とゝもたきやしつらん炭かまのけふりは山を巻てのほれる
鷹狩
久壺亭
狩行て放せははなる子母銭のもとの手もとへかへるはしたか
埋火
高見
寒き夜は灰をも浪にかきならしおきもかすかにみゆる埋火
蔭住
埋火にまためつらしやさくらすみ白雲程にのこるうはきえ
並人
小すにもうつりにけり姫桜すみなかめせぬまにちれる埋火
素人
太平の撫こゝろある桐火桶画は鳳凰をあそはせるとや
基人
基人
寒き夜は楊貴妃よりも愛しかときえてはかなき国の埋火
愚連房
つきたして火桶をほめて名をとへはちんといふたる獣のすみ
月澄
小はるとて花といふへきさくら炭おほろにひかる夜半の埋火
葉名園
釣たるゝ身こそつらけれ親嵐のおきふきをみす舟のうつみ火
神楽
神楽久壺高
一面白きふしをむすひて広前にいと中の音の夜の御神楽
同断同断同
小起神楽さむさに酒の神主もてふし揃ふてうたふ声に
瓢亭
八千年を祝こめてそむかしよりけふ九重にたえぬ御神楽
間垣
すみよしのきしの姫松それならてねあかりとなるき半の御神楽
早梅
としもまた越さぬ塩根の梅の花色香はすにまたきてそさゝ
袖垣
走り来る匂ひは春の先案内飛脚もならの早咲の梅
水仙
一水仙間垣
玉簾のもとに莟てそか中はきみもあるらん水仙の花
御仏事
並人
川越てむかしは九字の名号も六字にわたる法のとふとさ
有則
身を粉にはせぬとうす〳〵聞しをもおひきまはしの身こそうれしき
仏名
年の内はあくまて作るつみきえて残る仏の御名はかりなり
皆鶴亭
一夜終ふりにし雲も罪業も丸かしとける御ほとけの名そ
煤掃高見
煤掃
目にかゝるちりもほこりもなかりけりすをまつけのすゝはらひして
愚連房
とし毎に邪雁那ものゝ具大太刀もはくはかりなる御代の煤取
除夜
大としは秋とほしをきて居なからもねかせるかねはもたぬきこさ
淡雪
幸の尾を結ひ留たきをたまきの名残そをしき暁のそゝ難
歳暮
光陰の矢はせの舟はかこふともやはり世話しき暮のとし浪
古竹
歳暮にかさしものとてたまはりてすをまちゐる花のかんさし
並人
一ことのぬしの姿のかつらきやあくるせはしき一とせのこれ
題混雑
蔭住
一霞釜にえ付すみもうつり春のまとよりめてむ茶山花の花
久壺亭
夜焦引していさみつゝ魚の名のまたらやうたふこしの浦へ
同澄
よしのなるさんけの坂もつみかさねこすになんきな雲の山人
並人
残りたる菊の花すみ弐三本はけこんて置炉火のたのしさ
渓林斎
溪林齊
関守はみえねと越にこえかたき流てとまる雪のしら川
有則
〇短に馬も油断をするか路のむちよりいたき風はあてけり
高見
雪積てひめもすはやくくれ竹のまかりなりにも冬然らはや
素人
素人
一冬の空曇りかちなるかゝみ山老やしぬると立帰りみん
竹窓
寒きとて猪出しゝ日をかそふれは五十四郎の雲のまつ島
基人
冬の来て寒さは八とゝなにはつのあしにもつく旅のあはれさ
蔭住
伊勢詣もとるこし路の初雪ははや加賀笠の国にかゝれり
有則
木々はみな花もちりたり葉もつきてよふみたさるゝ冬の松かえ
瓢亭
夏の秋とくらふれはまた冬の夜の長くこしかくなりて寝てみん
愚連房
山か家はとふ人もなくけたものゝ炭を相手にふける冬の夜
間
冬の夜のなかい糸ひて生納豆命つなきと思ふたのしさ
袖垣
暖鳥はなちしかたをみもやらすこゝろや人にましらふの雁
峰高
初雲に女子わらんつひさくらん山にも木にもけしきむすへは
葉名園
一針過て鳥唐草の小倉にまかれて寝る起半のうらける
古竹
嵐ふく樹々のさむさの数しれすわかみひとつの冬にはあらねと
基人
十露畳の玉のあられを数とりにして数へてもつきぬる夫か代
竹窓
キと世ふる鐘かけ松も雪つみて枝もならさぬ夫か代の冬
素人
亀甲に庭のこほりもはりつめて天か齢も万代やへん
月岡里見
一雪ふらく卯の花こに黒羽のうたなとせめて御たつね申さん
並人
わたつみの世わたる中のとし忘したひの浪のよるひるはなし
有則
浅草の市に売かふはまちの光陰はやき矢大臣つ
蔭任
一商人の気もせき〳〵と冬の日のこしりのつまるつはな市とて
素人
夜終枝にともしてふるゆきも消なんとするあけの梅か香
清検斉兎涼
水鳥やみすはこほりてせまたも気は広沢の池にうとらん
豊後日田
一繁果亭舎栗
其心にみえて真国かちにおく霜の今朝は手迄もきらるつめたさ
豊後舎栗
羽花は着ねと寒さに撫火桶いはほのやうな炭をうつめて
湯治をはしくれのゆのいと迫りあかる間もなき降る有高山
魚津在業
一年の尾にむわふ袋は弓太刀をなほおしつめるほとのめてたさ
肥後熊本小倉庵
彦の山納むかふとの名にめてゝ猪首にみゆる雪のあけほの
深藪
〇雲きれて月はころりと移る時先り流るゝ玉川のさと
茶楽斎安麿
しろ〳〵とさむけさ月に帆のみええて汐けふりたつ越のから風
冬の梅鐘木町をもちかとなり嘸口きらはをとやきこえん
寒芦
月夜房
寒芦月夜房
大井川こゆる旅人水かれてあしやあらはに風わたるらん
春は花秋は紅葉をめてつゝおなし
心の朋曹のよみいたされしされ
うたをとち婦みにして名をいかたわらと
なつけしことはいにしへの粟のもとの
くりの実の落ちりしを飛ろひこの
みぢをこのめるさきんたちのことくつの
かす〳〵みつの堀江の浅瀬のあさはかに
藻塩草のみのあるもなきもかつまに
つみてくる〳〵の題を書りかた木のひと
まきと風なし故さて巻のはしふみを
ふたり鬼君にねきことしゝにともきの
おのれにもしりへにことのよしをそへて
よとそなかされてかくなむ
文政十とせといふとしの
むつきはつ子の日
月夜房気成
越富山
看雅堂
萩田永次
同喜兵衛
同平蔵
彫刻同直次
彫刻
同亀次
同藤兵衛
同岩次
同同柴八
越中富山二番町
書林
紅屋傳兵衛
天程八歳
大きま