ふんしやう 3巻

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不明
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[出版者不明]
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ブンショウ
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東北大学
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ブンショゾウシ
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書名 やう 巻 幸 月 年館 4昔 所和4 究令図 研々属 学月附 東伊仙令長 昭3大 台和北 写 載者 所蔵者 管理番号 資料番号 撮影 撮影年) } ふんしやう 別67 特別 置甲6 ふんしやう ふれしやう 上 別6 特別 置甲の 上 サインス 同40年刊し 荒井泰姫氏ノ寄附会を 以テ購入セル節博士 狩野亭吉氏藤蔵画 むかしより今にいたるまてめてたきこと をきゝつたふるにいやしきものことの ほかに成はしめよりおはりまてつゐに ものうきことなくめてたきはひたちのくに しほうちふんしやうと申ものにてそ侍り けるそのゆへをたつぬれはわうしやうより ひんかしとう八かこくひたちの国十六かう のうちにかしまの大明神と申てはやらせた まふか此みやの大くうしはちやうしやにて おはしける四方にくらをたてやうしうの こかねけいしうのたまいつれにつけても かけたる事はなしてん地にをきては一万 ちやうまき十六かういゑのかすは一万八千 けんなりらうとうかくこさうしき上中の 女はう八百人下女三百人草かり千人つか はれけり第一のたからにはわか君五人ひめ 君五人十人のたからそおはしましけるし かれは大くうしとのゝさうしきにふんたと 申てとしころのものあり下らうなから心 しやうちきにしてしうの心を空にさとり めいをそむかすよるひかなみやつかへけるある とき大くうしとのおほしめしけるはいつくを なにとたつぬとも文太かやうなるもの また世にありともおほえすしかれともか のものあまりにしやうちきなれはちと心 をみんとおほしめしてふん太をめしておほ せられけるいかにをのれとしころのもの といへとも我〳〵心にかなはぬなりいかな らんところへもゆくへしおもひなをしたら は又まいれふん太かしこまり申けるは千 人まんにんか一人にならんまても我は いのちをかきりにはなれまいらせしとたくひ なくおもひまいらせ 候へとも かく 御意 なれ ○ ちから なし とて なく〳〵 たち いて けり 同一二二一二一一二二一一二一一一一一一一一一一一一一二二 同一一一一一一一一一一一 かくてふん太はなく〳〵あしにまかせて ゆくほとにつのおかゝいそとてしほやく うらにつきにけりかなしき中にもおもしろ のていや心あらん人にみせはやとおもひて かくなん こゝろあらん人にみせはやつのおかゝ しほ屋のけふりなみのよかへを かくてしほやにたちいりて申けるは爰に たひなるものゝ候あはれみてをかせたさへと いひけれはあるしきゝてしかるへきことにて か有けるやとおもひたち出てみるにされは しうを大事におもふ身なれはかくれたる しんむなしからすや有けんあるしもうは のそらなるやうにてたれもひきあはする ひともなくしてまことにたひ人とみえて一 人たゝすみてゐるをみるよりもたゝなに となくいとおしくおもひてまつうちへいら せたまへとてうちへよひ入てさらはいつく と申候はんよりもこれにをきまはらせん とてそれよりいよ〳〵あはれみいとおしかり てをきにける有ときあるしいひけるは御身 いたつらにつく〳〵としてゐ候はんよりも何 をもなくさみにし給人いつれ御身はなに ことを給ふにはし給ひ候そといひけれは文 太このよしをきゝなにをけいのふともえ 申さす候馬かふよりほかはといひけれは あるしきゝこゝもとは馬かふことはいらす候 しほやにて候へはたき木をとりて給はり 候へと申けれはいとやすき事なりとてたき 木こそ日に〳〵とりにゆきけるもとより 大ちからなれはつねのもの五六人もつほと もちけれはあるしなのめならすによろこひ てまたとなきものにそおもひけるかくて とし月をふるほとに文太あるしにいひける はかりそめにほうとう申はや〳〵とし月も ふりまいらせ候かたよりもなく候程にしほ かまひとつたひ候へわたくしもしほをやき てうりたく候といひけれはあるしもとより あはれみぬることなれはしほかまひとつとら せけりそれより文はしほやきてうりける しかるへきことなれはふんたかしほは心も よくかふ人も色しろく此しほをくふ人は やまひもなくいのちもなかく心にかゝな こともなしされはよのしほのあたひ十はい をもつてかひけれはいつしかかきりなき長 しやにそ成にけるされはかまひとつといへ ともつねのかま十はかりかしほよりもお ほくさかへてめてたくなるほとにつの おかゝいそのしほへきともをみな〳〵したか へて我しほをそやかせけるふん太かしほと 名つけてやくしほはかきりなくおほかり けれは人もみなふしきの事に思ひくちき たなくもいはすめてたき事にそいひ のゝしりけるさるほとに月日にそへてめ てたくのみなりまさるほとに なをさかへて かいめいして ふんしやう つねおかとそ 申ける 四はうにくらをたて一まんちやうむまうし のまき七かうといのうちに七十五町かいこ めてさいけのかす三千けんいゑの有さま いふもをろかやむかししやたつちやうしやこ いひしもかくやとそおほえけるめてたしとも いふはかりなしされはひたちの国にさもある へきものゝひんなるはこのころしうなきかひ そをんをきらへと申せはなにかくるしかる へきとてみな〳〵ふんしやうにそつかはれ ける家のにらうとうかくこさうしき三百 人草かり百人つかひける下す女百人その 外上中下女はう百人うしつかひ三十人 つかひけなかゝるめてたきにひとつの事 のかけたるはなんしにても女ににても すゑつくへきに一人もなししかれともあ けくれはゑいくわにほこりてそすこし けるさるほとにある人大くうしとのへまい り申けるは御うちにさふらひしふんたは かきりなきちやうしやと成たからにあき みちてあまりのゑいくわに十せんの君と 申とも御くらゐやまさりましまさん又は 大くうしとのにてもましませふんしやうに はまさり給はしと申なりちとめしよせ てきこしめせと申けれは大くうし殿ふしき なる事におほしめしさらはとてふんしやう をめされけりふんしやうけれしき事かきり なくてときもうつさすまいりける大庭に かしこまつてゐたるを大くうしとの御らん して身こそいやしくともかやうにくはほう めてたきものはたゝこれへ〳〵とそおほせ けるおほせをそむけはかへつておそれあり とて御えんまてとそまいりけれいかにふん しやうまことにかきりなきちやうしやに成 て国うちをひゝかし心のおこるまゝに十せ むの君も我にはいかてまさり給はしとかたし けなくもおもひまいらせ候ゐる御ことをひん なうたとへつるとよなかしこまりうけ給候 われらいやしき身なれともかやうにたから をもち聞事よとおもひ候まゝあやなく申て 御さ久いかほとのたからなれはさやうにいふ そ君にはなにをもかくし申候はんとかねし ろかねあやれうらん七ちん万ほうかすを しらす四はうにつくりならへたなくらは かすをわすれ申候まことにめてたきくわ ほうかなさてすゑつくへき子はなきか一 人も御さ候はぬそれはきよくなき事かな ひとはにをもちたるこそ第一のたからなれ なんちかおほくのたからをもちたりとも にのなからんにはみな〳〵人の物にこそなる へけれたゝ〳〵よく〳〵物をあんするにた からをもち子のなき事はせんそのことゝは いひなからあさましきなりしからは神仏の 御ちからをのみとおもふなりなんちおほ くもちたるたからともをいそき〳〵神仏 にまいらせてせめて一人なりとも子をさ つけてたまはれといのり申せとせんひを くたきておしへ給ふそあはれなる御思ひ 有かたくそんしいとま申てふんしやうは わかいゑにこそかへりけれ女はうをちかつけ いかにわこせおもふしさいありとく〳〵ふる さとへ御かへり候へといひけれは女はうきゝ 大くうしとのよりかへりて我をおひいた すはいかさま大くうしとのゝ御はからひに てへちのつまを御まうけ候へとおほせ候や なにをとかにて御いはせ候そとかこちける ふんしやうけにもとおもひて大くうし殿 のおほせらるゝこともなしまたは心をうつ すかたもなしさら〳〵をろかにおもひたて まつらす候へとも大くうしとのおほせられ 事には子を一人ももたさることをほいな き事におほしめしていろ〳〵有かたく御 いけんかへは今さら子の一人もなきことを おもひ候へはうらめしくあさましくこそかへ しかるへくは子を一人うみて給はり候へと うちとけてかたりける女はうこのよしきゝ いかにやにをうむへきならは御身十七わら は十三よりあひくしたるに二十や三十の時 こそうむへけれ四十に成まてむまさる子 をおつとにさられしとていかてかうむへき そのきならはちからをよはす候わかき女はう のみめよきをよひいくたりもにを御まう けかへふんしやうおもひけるはされは今さら の人をたつぬへきにもあらすにをまけね はとてわれる人もわかくおさなきときより 此としころまてつれそひていまさらわかれ むこともけしからぬことなるへし大くうしこのも 神ほとけをのみおほくのたからともをま いらせていのり申せとおほせ候つれはいさ 〳〵さやうのこともやあるらんとこそ申けれ 女はうまことに神ほとけの御はからひなら ては成かたき事にて候さりなからわか身 としすき候へはたのみすくなく候へさてこそ 神ほとけの御ちかひにて候はんすれいさ さらはまつ大かたたからをそろへて大明 しんへまいらんとてふうふともにそこしら へけるかくてふうふのものいろ〳〵のたから をそろへ大みやうしんの御まへにまいりかん たんをくたきいのり申三千三百三十三と のらいはいをひゝにまいらせねかはくはつ ねおかに一人のふうしをたひ給へといのり けるに七日と申夜半はかりにとひらを置 らきまことにけたかき御こゑにてなんち か申むねさりかたきゆへに此七日のあひた いたらぬくまなくもとむれともにになるへ きものなしされともこれを給はるとて れんけを二ふさ給はるをたもとにいるゝと みて夢うちおとろき なのめならすよろこひて ふうふけかう申 ける そのゝち女はうたゝならす成ぬふんしやう よろこひてかまひて八十国にすくれたる おのこをうみてたひ給へとそ申けるやう 〳〵月日かさなりていたはることもなくて 三十二さうたらひたるひめ君をみうみたて まへりけるにふんしやうきゝていかにさし 覚やくそく申つるかひもなくによしをう み給ふそとしかりけれはひたちとのと申て おとなしき女はうたちの有けるかひとの 御子にはひめ君こそ後めてたき事にて こそさふらへいかにかくはと申けれはさらは とていれたてまつりてみるにたくひなく うつくしきひめ君にてましませは文しやう はしめのこと葉にはにすよろこふ事かき りなしもりめのとかいしやく人みめよく かたちすくれたる人をえらひてあまたつ けにけりさてまたつきのとしひかるほとの うつくしきひめ君いてき給ひけりふん正 らんとはなにそととひけれはあね君のとき さへをんなことてしかり給へはましていま ひめ君と申たらはよしともおほせられし とおもひてみな〳〵をともせさりけれはあ むことくなにそとふんしやうとひける女 はうたちみな〳〵物をもえいはさりけり ふんしやうあまりにきふくとひける程に こと葉なくしてれいのことゝ申ふんしやう きゝてあらめつらしきことや大くうしとのに 十人のきんたちましませともわか君ひめ 君とこそ申候へれいのことゝいふことやある よくきゝをくへしとてしかりけれはのかれ かたくてひめ君と申せはふんしやう大き にはらをたてまへにこそやくそくたかへ 給はめさのみはいかて人のめいをそむきた まふそやふたりうみ給ふ子をなとか一人は おのこをうみてつねおかにたはさらんやそ のきならはいとまをまつらするそその子をく してとく〳〵出たまへといひのゝしる こゑは たゝいかつちの ことし 第一一一 其ときまたひたちとのゝ申されけるはい かに御心もなきことをおちせられ候この 御子さまたちと申は神ほとけにさま〳〵の いのりをかけたのみまいらせてこそいて きさせ給て候へはよのつねならぬ御事なり しかしなからかみさまの御とかならすよく〳〵 ものをおほしめし御わきまへわか子さまをは なにをかさせ給ふへきいかにたけくおほし めさるゝとも大くうしとのにこそつかはれ 給ふへけれひめ君をもちまいらせたまへは 八十国の大みやうかうせいつれか御むこに ならせたまはさるへき此姫君たちの御す かたを見まいらさせたまへ天下第一の ならひなき御事にみえさせたまひてこそ 候へふんしやうとのゝ君たちと申ともくに のかうけは申にをよはすみやこにわたらせ たまふくけてんしやう人のきんたちの北 のかたにもならせたまふへししかるへき御 事とはおほしめさすや御くはほうこそめ てたくましますともねかふても有かたき 事におほしめされ候へと申けれはそのとき ふんしやううちゑみてさては女子もよき事 にて有けるよさらはこなたへよひたてま つれとて手つからさしきのちりふきはらひ よひまいらせてこのひめ君をみるにあね 君にもおとらすうつくしくましませはい よ〳〵をろかならすめのとあまたしんしやう なるをえらひつけはんへり此ひめきみ たちの御名をは御むさうにれんせを たまはりたれはとて あね君 をは れんと御せん いもうと 君をは はちす 御せん とそ 申 ける かくてとし月をふるほとに此ひめ君たち の御かたち有さまはひかりもさしそふ心 ちしてまことにはなのにほひも咲まさり てそみえ給ふなにゝつけてもくらからす かきなかし給ふ筆のあとなとまことにとし かた行すゑにもかゝるためしはよもあらし つねはこせをねかふ御心さしもありなにゝ つけてもたくひなくめてたく有かたき 御さまなりをろかなる御ことそなかりける わか御いゑより北に四町まちにつゐちを つき四はうに門をあらはし四季の草木を うへをき玉をもつてかさりこかねを地に まきまことにかゝへくはかりなり上らう 女はう上わらは心さますかたよきをえら ひてそへかしつき給ひけりされは八かこく の大みやうこれをきゝ我も〳〵とふみたま つさのかす友のあしよりもしけしされは あけくれはかゝるあつまのおくに生れけん ことのあさましさよみても人けんとむまれ なはみやこにあとをとゝめてやさしきことを 見きくならは世にあるかひも有なんとて たゝ女御きさきのくらゐをのみ心にかけ 給ひてよのつねのことをかけてもおもひ よらすふんしやうは大みやうかうけのおほ とをかうふれはめてたくめんほくに思ひて ひめしたちにこのよしを聞ゆれはすこしも おもむきたるていなくてはしたなく世事 してきゝもいれたまはすくれかたにはらう とうをあつめてはんをきひしみよひ〳〵こ とのせきもりもかたけれはうはひとるひとも なし物まうてをねらひけれはふんしやう このよしをきゝてひめしたちの物まうては しかるへからすとてにしのはうに御たうを たてあみたの三そんをすへたてまつりて ほかへの物まうてなけれはちからなくてたゝ 恋のけふりのたゆるところはなかりけり 大くうしとの此よしをきゝ給ひてふん正を めしてまことやいかにふんしやうはひかるほ とのひめをもちたるか大みやうかうけのつ かひ留のあしよりもしけきよしきくなれは かれをほかへ出す事いかゝあるへきさたみ つか子の中にいつれにてもよめにとるへ きそとのたまへはふんしやうけけたまはり まことにによしはもつへかりけるものかな いかにけたかく思ふともおのこならはさうし きにあかるともかくこなとよりほかはしら さるに大くうしとのゝあひやけといはれ むことのうれしさよとおもひおほせをかう ふるうへを子ともに申きかせて御へんし を申あけまいらせ候へしとてかへりけるさて ふんしやうはやとへかへりてもんより申 けるはあら〳〵めてたや大くうしとのゝ君 たちをむとにとりまいらすへきなり我と 思はん人々はみな〳〵出て御とも申せと のゝしりけりさてひめ君のかたへまいりて かやうのめてたき事こそ候はね大くうし との御よめこにとり給ふへきよしおほせを かうふりて候そとよに心よけにうちゑみ て申けれはひめ君たちきゝもあへすさめ〳〵 となき給へはふんしやうあやしくおもひい かに〳〵とあきれたるかほつきにてめうち しはたゝきてゐたりけれはしはらくありて ひめ君のおほせことにはいかてかやうのことを おほしめしよらせ給ふそやゆめ〳〵かなふまし き事にて候われ〳〵か心に大くうしとのゝ きんたちにてもなにともおもひまはらせ 思なりひめ君よめ御せんたちの御すめさ にさけられまはらせられて御さかつきの なかれをたまはもんすることのかなしさよ せめて御しうならはみやつかへにはまいる ともこの事にをきてはゆめ〳〵おもひより 候はすとかきくときの給へはふんしやうほ いなけにおもひておに〳〵つね出かゝあし くこそ候へと こと葉 すくなにいひ すてゝ たち に ける 同日朝日朝鮮朝鮮朝鮮朝鮮朝鮮朝鮮朝鮮 同日朝日朝鮮朝鮮朝鮮朝鮮朝鮮朝鮮朝鮮朝鮮朝鮮朝鮮朝鮮朝鮮朝鮮朝鮮朝鮮朝鮮朝日朝鮮朝朝朝鮮朝鮮朝鮮朝鮮朝鮮朝鮮朝鮮朝朝朝鮮朝朝朝朝朝朝朝朝朝朝朝朝朝朝朝朝鮮朝朝朝日朝朝朝朝朝鮮鮮鮮鮮朝鮮朝朝朝鮮朝朝 そのゝち大くうしとのよりたひ〳〵の御つ かひ有けれはふんしやう申ことにはめんほく もなきことなからとかく御返事申へきやう 覚御さ候はす候ひらにまいらせしと申候へは ちからなく御めんあれと申けれは大くうし とのはらをたて給ひてふんしやうかにに てさたみつかにともをきらふ事こそふし きなれいそきまいらすはひか事たるへき とてかさね〳〵の御つかひ有けれは文しやう むすめとものかたへゆきて申けるはひめ君 たちの事によつて大くうしとのゝ御 せつかんにあつかり候そやむまれおち給ひ しよりをろかならすおもひたてまつりし かひもなくいまはかやうにおやに物を思はせ 給ふこそほいなけれとかきくときけれはひめ きみのたまひけるはなにをかさのみなけかせ 給ふそや御身の御ふしんをかうふらせ給ふ へきたとひ御うちにみやつかへ給ふとも かやうの事うへ〳〵した〳〵によらぬことに てこそ候へまた世の中あちきなくいく程 ならぬ事にて候へは身をすてあまに成 てこそとおもひ候へは八十国のうちにいつ れのかたへもたち出候はんときこそ御ふ しん候はんすれと申させ給へとのたまへは ふんしやうはさめ〳〵となきさしも是ほと うつくしき御有さまをかくはのたまふやと いひけれはひめ君世々のおほせにはたゝと にかくに我りをあさは夕御らんせらるゝを せんとおほしめし候へとの給へはふんしやう いまはことはもなくしておに〳〵これも御 ことはりなりこのうへはちからなしとて此よし 大くうしとのへ申けれは大くうしとの聞しめし て思ひ第一の人にてましませはけにそれ程 にいふことならはちからなしことさらかれらは なきにを神ほとけにことをつくしてまう けぬる子ともなれはふんしやうふうふのも のか心中さそあるらんとてそのゝちはと かくおほせらねはふんしやう よろこふ事かきり なし 置づ 特別 ふんしやう 第八売 さるほとに此はるはゐんうちつきまいら せたるにまつてんかの御りやうなりその うちゑふのくらんとみちしけと申人こくし をたまはりてくたりける此人なのめならす いろこのみにていかなるいやしきものなり ともみめよく心さまのよからんを見はや とていまた御せんもなかりけりとくしな れは大みやうかうけのむすめをわれも〳〵と のそみをかけまいらせけるか心にいれられ すしてたゝひとりのみおはするをある人申 けるいかにつれ〳〵にておはし候やらんと申 けれはこくしきゝ給ひてされは我もかくて のみすこしかへはあちきなくてみやこへの ほらはやとこそおもひ候へあはれいかならん ものなりともみめよく心さまのよからむ をこそとのたまへはかしまの大くうしのさう しきふんしやうと申ものとそ子はもた さけしか大明神の申子よひかるやうなる むすめをもちまいらせ候か大みやうかうけの われも〳〵とおほせ候へともすこしもおもむ かすしうの大くうしとのもよめにとらんと ありしかとももちひすして候すへてふん しやうかむすめともおほえすたゝ天にん なとのあまくたらせ給ひけるかとうけたま はりをよひて候ふたりのおやもしうなと のやうにもてなしかしつき候かおなし世 にあらは女御きさきのくらゐをのみ心かけ てかなはすはうき心をそむかんときこえ候 それをしうの大くうしとのにおほせられ 候てめし候へなとゝ申けれは今あはんする やうによろこひ給ひて此ことをいままて きかさりつることのほいなさよこれかなひ ぬるものならは国十六かうのうちをいつれ にてもまいらせんと よろこひの ひきてものを さま〳〵 ひかせ 給ひ ける } 一二二二十一 同日同日同日 十九日四日の日曜日 大くうしとのをいそきめしてなにとなく 世上のものかたりをめされいたして此国 ひろしといへともせはきそ我心につく人 やあるおほくの人をむかへ候へともさるへき 人をみすまことや御うちのさうしきにい つくしきむすめをもちたるよしうけたま はり候それをいかにもして御はからひ候て 給はり候へよよろこひにはこくしをゆへり 申さんとのたまへはかしこまつておほせ うけたまはり候さるもの候へともすへて 人の申事にもおやのいさめにもつかぬも のにて候へはまいらんともおほえすはしかれ とも申てみんとてすなはちふんしやう御 ともなりけるをかたはらへめしてかゝるめて たき事こそあれなんちかむすめをきこ しめしてさたみつにおほせつけてみたい にまいらせよとの御ちやうなりそのよろ こひにはこくしを給はらんとおほせをかう ふるなりをんなこをはもつへきものかな をのれほとのものゝ子をみたいにめされ しん事こそこんしやうみらいにあり かたきことなれもしさもあらはたいくわ むをはをのれにたふへしかたなめんほく いかてかあるへきとのたさへはふんしやう 世にうれしけにおもひてかしこまつて うけたまはり候これもおやの申ことを もちひぬものにて候へはいかゝ申さんしり なからゐなか人をこそきらひ候へ京上 らうにてわたゝせ給へはかなふへしいそ きやとへかへりて大もんよりのゝしり いりけるはあらめてたやまこともひめきみ たちのむまれたまひしときひたちとのか 申せしことのちかはさることやによしをはね かひてももつへきものなれむまれたまひ しときをんなこなりとくすてまいらせ たらはいかてかいまこくしの御しうとには 成まいらせしみな〳〵うちのものけたかくし て御ともせよとたゝいまあらんするやうに のゝしりよろこひけりふんしやう女はうに 申けるは我おのこゝのおやの身としてさの みはおもてをかへすかやうの事申もはゝか りあり女のおやにて候へはいかにもよきやう に心えて申候へとそ申ける女はうさらは とてひめ君にのたまへはなをもうけひき 給はすふんしやうとのよしきゝまことに此 事かなはすはこくしの御きしよくわるくし て大くうしとの御かんたうをかうふかなは つねおかはなにとし候へきそやしかるへく こそおやにのえんも有たまはめかく心を いたましめ給ふかなしさよとくときけれは ひめ君のたまふまことにおやのおほせをは いかてかそむき申へきなれともこのことに をきてはかなふましきなりさなきたに国 の人々はわか子をはきようとのみ申さるゝ にこくしのおほせなりとてもさもあらん にはいとかたきをうけ給はんするにやな をもおほせ候はんならは身をこそいたつらに なし候はんすれとて袖のしからみせきあ へすかゝる有さまいかなるいは木なりとも 身はましておやの心にはよのつねならぬ たにもいとをしく思ふならひあり秋の野 のをみなへし露おもけなる有さまたとへ むかたなくうつくしくありけるにゆへに いかなるとかにあたるとてもかほとに思はむ ことをはいからとおもひて大くうし殿おほ せられしときさへきこしめしわけて候へは たゝうき世はかりの世の中にて候へはたゝ あまに成て心のまゝにおこなひひとへ にうき世のいとなみをとこそ申候へはなに ともせんかたもなく候このよしをこくし さまへもよきやうに御申候て給候へと申書は 大くうしとのもよにほいなくおほしてこ くしにまいり給ひてこのよしを申させ 給ふかねてもきこしめしくはんかのふん正か むすめすくれてにんけんの心をもちて候 なりいくほともなき夢の世にたゝさまを かへてのちの世のほたいをもとめんと申て 国うちの人々殺も〳〵と申され候つれとも きゝいれす候ほとにおほせ候ともかなひ候 ましきと申せはちからをよはすと候へはこ くしも此ほとはさりともとあひみるへき心 ちして有つるに今よりのちはなにをまち てすくへきとてみやこへのほり給ふ折ふし こくしたち国々よりあつまりてを給くの 物かたりある中にゑふのくらんとわか心に かゝるまゝにいつれの国と申ともひたちの 国よりめつらしき事は候ましと申けれはて むかの御子に二位のちうしやうとの此よし をきこしめしてなにそとたつねさせ給 けれはうへまてきこしめし候はんする事にて はなく候ひたちの国のちんしゆにかしまの 大みやうしんのねき大くうしと申ものゝさか しきふんしやうと申かいかなる事かやう とくにしてたからにあきみちてしうの 大くうしにもまさりて候かとしたけ候まて 子をもたすしてかしまの大みやうしんに いのり候へはひかるほとの姫を二人まうけ て候かいつれもいつくしくて心はへなんと すへてふんしやうかにと申人もなく心さ まよろつなさけもふかく侍り天人のやう かうもかくやと申候みちしけもとかく申候 しかきゝいれすたゝ世になからふへき身 ならは女御きさきののそみをなしさらすは さまをかへほとけのみちにいらんとのそみを なし候とふかくおもひ入たるよしをかたりた まへはちうしやうとのつく〳〵ときこしめし てそれより御心あくかれてあさ夕は御 もとなくおほしめすいかなる世のちきり にやこのこと葉をきこしめしてよりふかく おもひにしつみあけくれはやまふの床に臥給けり KI てんかの北のまんところ御心をつくして やま〳〵てら〳〵にて御いのり有けるつな かぬ月日なれは程なく殊にそなりにける 八月十五夜の月くまもなき夜てん上人 たちまいり給ひてちうしやうとのれい ならになやみ給ふをなくさめまいらせ給ひ けりちうしやうとのくまなき月を御らん して 月みれとやるかたもなくかなしきは ひともとひこぬ秋の夜すから とかやうにゑいし給ひて御袖をかほりをし あてゝまきらかし給へは御けしきせきかね て御袖のしからみまことにたへかねてそみ えさせ給ふさるほとにこれをひやうゑの すけみかとめまいらせてこのほとはきみ れいならぬ御心ちとみえさせ給ひ候か御心 にものをおほしめしけるをいまゝてさとりま いらせさりける事よとてしきふのたゆふ さうまのすけと三人申されけるは君の御 なやみのやうを見まいらせ候にたゝならぬ 御ことゝ見えさせ給ふいかなる御事にても うけたまはり候はゝたとひいかならんもろ としまてもなとかたろねて参らせさらん なとゝ心あるさまに申給へはいとあさましく おほしめしもわけねはとふにつらさはいとゝ うちなきていまはなわをかへたつへき すきにし春ゑふのくらんと物かたりせし ひたちの国大くうしとかやさうしきふん正か むすめの有さまをきゝしよりせんかたもなく 心にかゝりわれなからあさましく思ふそと て御なみたにせきあへたまはすまことに よそのたもとまてもやるかたなくそおほ ゆるをの〳〵申されけるはむかしより恋の みちはさもこそつねのならひなれ出させ 給へくしまいらせてひたちの国人くたり 候はんと申給へはちうしやうとのきうしめし てなのめならす御よろこひ かきりなくて 出たゝせ 給ふ } 凡人 かし □□□□ さて此人々かくは申ついかゝしてくしま いらすへきみやこのうちにてたにもま きるゝかたなくうつくしき御有さまなれは ましてあつまのおくにてはまかふへきにも あらすさりなからきてあるへきならねはとて あんしつゝまことやらんゐなか人はあき人 をこそちかつけよするといふ女はうのしやう そくいろ〳〵のてくそくなとをせんたひつ にいれてゆひてくたらはやといひさため て出たち給ふほとにちうしやうとの御 母てんかの北のまんところいま一とみえ たてまつらんとまほしめしてまいり給へは 此日ころは御きちやうのゆかにふししつ み給ひしにおきあかり給へは御うれしさ かきりなくよろこひ給ひてめつらしけに まほり給ふひとしれすかゝる心のつきそ めてはる〳〵おもひやり給ふもかなしくて うちなみたくみ給へは御けしきもかはり てみえ給ふほとになにことをおほしめすそ やわれよにあらんほとはいかならんことにて 覚御心にたかへたてまつるへきにもあら すいつとなくむすほれたる御けしきを見 たてまつるこそ心くるしけれ身をもいまは つかさをなさはやとおほしめせともかやうに なとやらんなやみ給へはいたはしさにしはしは なとゝ申てとそ候へと御ふたところなみた くみ給へはいとゝかきくらす心地したまへは 御まへをさらぬへうにもてなして たち 給ふ □□ □□ 御うしろをはる〳〵御らんしをくり給て いま一と見まはらせんとおほしめしけれとも めもくれ心もまよひて中々にあやし とおほしめされんと御心つよくわか御 かたへおはして物なんとしたゝめさせ給ひ てもわか心からのことなれともよろつ心 ほそくてんかはゝうへのみてもあかす かなしきことにおほしめしたるにいかはかり かおほしめしなけかせ給はんと思ひやられ 給ふにも御たもとをぬらしつゝ思ふ事さへ かなひなはしはしこそあらんすらんとおほ しめしさためてふてのあとすさひに はしらにかきつけ給けり としふともわすれすまてよまきはしら おもかはりせていまかへりこむ あけぬれはぬきをき給ふ御しやうそくの 御袖に あふまてのかたみなりけりぬきをくを かはれる袖と思ふなよきみ かやうにかきつけていつめしなれぬひたゝ れにわらくつをはき給ひ出させたまふ御 ともの人々もおなし出たちに御身をやつ し給ひて四人の人々心ほそけにうちし ほれたる有さまにて九月十日あまりに みやこを出 ひたちの 国人と おもむ と 給ふ いつれもわかき人々なれはみちすからもの あはれにおほしつゝけてよろつの草木 にいたるまてめをとゝめ哥をよみなくさ めまつらせてくたり給ふかゝるおりふし鹿 のねかすかにをとつれけれはむしのこゑ 草むらによはるをきゝ給ひ御身にそへて いとゝあはれにおほしめしちうしやうとの 身にしれは鹿のこゑさへあはれなり さそつまとひのかなしかるらむ かやうにあそはしけれはをの〳〵もいとゝあ はれにそみたてまつるけに世の中に恋 のみちほとかなしき事はよもあらしとて みな〳〵なみたをなかしつゝひやうめのすけ をはしめしきふの太夫なと一しゆつゝゑい し給ふすゑたのもしとおほしめし候へとて いはひゆくほとに日かすつもれはふはのせ き八はしのもときすき給ふにからころも きつゝなれにしいにしへもいまのやうに思 はれていとゝくもてに物やおもふらんいつ ならはせ給はねにしやけんのつちをふさせ 給へは御あしはくれなゐに成みちすからやう 〳〵いたはりまいらせてあくれは又たち出 給ふにとしのよはひ七八十はかりなるお きな山の中にたち出申けるはをの〳〵はい かなる人にてましますそととひけれは都 あき人にて候かひたちの国へ物うりにくた り候とのたまへはあき人とおほせ候へとも まことのあき人ことは見まはらせ候はすこの ころみやこに聞えさせ給ふてんかの御子 二ゐのちうしやうとのとこそみまいらせて 人恋ちにまよひ出給へるか此冬のころは おほしめす人にかならすあはせ給ふへし 此せうかよく見まいらせ候そと申せはおそ ろしくおほしめしなからさてはおもふ人に ひきあはすへきうれしさよとて御よろこ ひにめん〳〵一しゆつゝつらね給ふ さうまのすけ 袖の月もつゐにひかりのはれぬへし たつぬる人にめくりあひなは しきふの太夫 うらやましよそはさやけき月かけも にかなみたにはくもる夜半かな ひやうゑのすけ さなきたにかなしき秋のころなるに あはれをそふるむしのこゑ〳〵 かやうにゑいし給ひてのち小袖一かさねとり いたしてたまはる おきなきよかつ 雲のうへよめくりあひつゝ行すゑは 月のひかりのてりまさりなん そのゝちおきなこれこそ聞ゆるみとをして なり とかくしてくしたてまつりてくたり給ふ ほとにすてにはやひたちの国にくたり つき給ひてまつかしまの大みやうしんにま いりたまひ御つやありなむきみやうちよう らい本地くわんせをんほさつねかはくは文 しやうかむすめにあはせてたひたまへと よもすからきねんし給ひてあくれは御 けかうありある小家にたちいらせ給ひて あるしをたのみ道しるへさせて御覧すれは まことにいかめしきなとゝいふはかりなし 七十ちやうをかいこめてもんをは三えにそ たてたりけるかゝるゐ中にも是ほとめて たきところ有ける事よとおほしめすしか れともいひよるへきたよりなくてをの〳〵 たちわつらひてそおはしけるに下す女出 て申けるはをの〳〵はいかなる人にてわたら せ給ふそととひけれはみやこのかたより物 うりにくたりたるものにて候とのたさへは さやうの物をこそこれにはたつねさせ給へ 御うへゝ申あけ候はんといひけれはをの〳〵う れしくおほしめしてやかてその女ととも にうちへそいり給ふおなし色のしやうそ くにていろ〳〵の物をそうり給ふかふり そくたいうへのきぬむらさきのさしぬき しやくひあふきもゝしきの女はうのしやう そくには春はよしとはつこの花いろ〳〵を つくしておりたるとうはいの梅さくら 柳のいとの春風にみたれて物そおもはるゝ ちきりのほとはしこねともをとにもかに 心をつくしのうみの籾もいまこかれ出にし 山ふきのいろをおもへはくちなしのいひも 出さぬあはれしれいのちをかきりあふこと を松にかゝれる藤のはなむすひかけたるち きりをめしたくや候又爰はなみにすゝしき をしかまをおりつけてしやうふかさねのから きぬに恋の百しゆをぬひつくしうのはなか さねいつかさて恋しき人をみちのくのし 給ふ君さとをたつぬれはあはれとたれかさゝ かにのくもてにものやおもふらんこれらをめ され候はんか焼はもみちの色ふかくちくさの はなをおりつくしいつかは人にあひそめの からきぬあまたかさねつゝ袖はくち葉にあ くかれて恋ちにまよふみちしはのつゆ うちはらふしら菊のうつろふいろも候冬は また人めも草もかれはてゝ雪のしたなる ねさし草いかてかたれもみるへきふしの けふりのもえ出てうはのそらなる身そつら き風のたよりのつくにても心のほとを しらせはやさすかに思ひふかけれはきえかへ かなこそくるしけれかやうにいろ〳〵をおりた るものをめしたくや候御はかまのいろ〳〵は しろきもあかきも御入候めしたくや候手 くそくのすくれておほゆるてはこすゝり かけこえりのつほとよのあかりのせちゑ のくしたゝうかみも候とうはいくれなゐ ちむらさきもみちかさねの うすやう すみふてなとも 御いり候 なり まためいかうたきものつけほしなとも候ま くらのすくれてやさしきははなまくらうけ のまくらはしめて人ににゐまくらかやう のものなとも御いり候ことにすくれておほ ゆるはしろかねにていたるから馬からくら からねすみうくひすひよとりうそひわ 小鳥なとかすをつくしたるか候めしたくや候 からかなやさしきうり物ともかはせ給へ人々と こゑ〳〵におもしろくこと葉ことに恋の心 をよせてきゝやしるとうり給ふふんしやう かうちのものおほけれときゝしるひとはな かりけりしかれともふんしやうのうちに としころの女はうみやこの人にて有けるか なさけもありてゑかきはなむすひしゆせ きなとはうつくしくかきなかし和歌の道 をも心えてみめかたちよろつの心さまや さしかりけれはひめ君たちの御かいしやくに つけをかせ給ひけるか此あき人をみとゝめ てすかた有さまにいたるまてたゝ人ならぬ ふけいうりものこと葉つき京上らうのふる まひをみまはらせけれはいかさまあやしき ふるまひをし給ふ物かなこれにこくしとて くたり給ひし人のおほせをきゝいれさせ給 はさりしかそれやおもひあまりて都にて かたり給へるをわかてんしやう人きゝつたへ 給てあつこのおくのはる〳〵なれは御つ かひ有とてもさためてもちひ給はしとて あのへうに御身をやつし給ふ人にてもあ ならんと心にあやしくこそおもひけれさて おほくのものうり給ふこと葉にも恋の心を つくし給ふそやと申けれはふんしやうかうち のものともむかしよりきゝつたへいまに いたるまてかやうにめつらしくおもしろき 事は候はぬとのさま御出候て御きゝ候へとい ひけれはふんしやうていのつまとををし あけてみれはまことにおもしろくめつらしき 事いはんかたなくおもしろくうりたまふ ものかないま一とうり給へきかんと申され けれは此人々めとめを見あはせてこれこそ 聞ゆるふんしやうなれとてなをこと葉やさ しくうり給へはふんしやう身にしみおもし ろくきゝもあかすなき〳〵と申けれは二三 とまてこそうり給ひけれあまりおもしろさ におもひけるはさていかゝしてこのとのはら たちをこれにとゝめをきて物うらせてき らんとおもひてやあとのはらたちやとはいつ くそととへはをの〳〵きこしめしたゝ今くた りつきて候へはいまたやともさたまらす候と のたまへはふんしやうさらは是にわたらせ たまへやとをかしまいらせ候はんまたうり物は よそへ出てもうり給へと申けれはをの〳〵き こしめしてこれはのそむところかなとう れしくおほしめしけるさてなかのていへ いれまいらせ御あしのゆなとまいらせたり ふれはさうまのすけ御あしをすまし給ふ ひやうゑのすけはねりぬきのたなこひま いらせけるちうしやうとのすきにし春より ふししつみ給ひてふかく御身をやつし久々 のたひのつかれにかけのやうにみえ給ふを ふんしやうかうちのものとものそきそゝめき 申けるはあのせんたはこをもたぬやせおとこ はしうにてあるやらん大事のはんさうたら ひにてあしをひとりかあらへはいまひとりはう つくしききぬてぬくひをとりいたしての こふそやあら〳〵 おかしきことを するそなふとて みな〳〵 わらひ けり ふんしやう京あき人ははつかしきそや くこなとしんしやうにとゝのへてまいらせ よといひけれはたかつきに八しゆのくそく みな〳〵なをし出なしことくにしてすへけり をの〳〵はとりおろしてかしこまる文しやう かうちのものともこれをみて申けるはさ ても京の人はおかしき物かななにあの屋 せくわしやにものをくはせてのこりはひれ ふしたるやうにしてくひもならはぬやらん わかそなへをはみなとりおろしてくひ候とや こはつきみめにもよらぬならひのわるさよ とてわらひけるふんしやう出て此人々に さけをすゝめんとていろ〳〵のさかなとり そろへふんしやうまつよこさにゐてさか つきをとりあけて申けるはあるしくわん はくと申ことの候へはつねおかにまつたへよ とおほしめすらんとてさしうけて二三こ むのみけりさてちうしやうとのにさしま いらせけれは此うへはまいらさらんもしかるへ からねはちからをよはすまいりけりをの〳〵 みるめもくるしくて恋のみちほとかなしき ことはよもあらしゐんうちよりほかはたれ か君よりさきには御さかつきとらせ給ふへき やとおもひみな〳〵なみたをなかしつゝきみ よしなきことをおほしめしそめさせ給ひし ゆへあのふんしやうかさかつきをまいらせ ける事よと忍ひのなみたをなかしける ふんしやうしひのまきれに申けるはつね おかはまことにいやしきものにて候へとも むすめを二人かしまの大明神より給はりて候 かしうのやうにもてなし候みめかたち有 かたくすくれてなこふ人も候はぬねよけに みゆるわか草を人のむすはんことをしそ思 ひて月日をすこし候国大みやうたち我も 〳〵と申され候へともきゝ入す候これほとの よきひめかひとつのくせにはとのきらひ のひめにてこれかかたわにて候すてにつ ねおかゝしうの大くうしとのよめにこと仰 られつれとももちひ申さすたゝうつくし きすかたをいたつらに候なりしかれはこの むすめともに女はうともあまたけい給ふを えらひてそへをきて候か一たんみめよき女 はうの候もしさやうのものなとおほしめし よらせたまひ候はゝ御ちそう申へししはし はこれに御とゝまり候へと申けれは中将殿 をはしめをの〳〵おかしくそおほしめすその のち心もこと葉もをよはぬてはこにうつ くしきものともを入てすゝりにそへてひめ 君のかたへとてつかはすひめ君御らんして いかほとおほくのたから物をみつれとも是 ほとうつくしき物いまたみすあら〳〵め つらしくいつくしきものかなとて手つから ひきよせ御らんしけれはすゝりのしたに 人のみつへくもなくちいさきもみちかさね のらすやうに 君ゆへにまよひきにけるみちのくの しのふこゝろをあはれともとへ かやうにふてのあとすみつきなといまた みなれぬしんしやうさよ此とし月あなた となたよりのふみたまつさをみつれとも心に つくふみなかりしにこれはあやしくきゝつ るにされはとそとおほしめしておとろき 給ふあね君これをかくし給へはいもうと君 うらやみ給ふふんしやうきゝかのあき人た ちのかたへまいりいせん申ことくつねおかは むすめを二人もちて候かさきに給はりつる うつくしきものをいもうとかみ申てうらや み申候ほとになにゝても候へ此いもうとにも 給はり候へかしと申けれはやすき事とてあね 君のにおとらぬうつくしきものそへてをく られけるいもうと君よろこひ給ひける 置付 特別 ふんしやう さるほとにふんしやう申けるはたひはよ のはね心さひしき物にて候なりつれ〳〵に ましまさはにしの御たうへまいり御なくさ み候へといとこま〳〵と申けれは此人々つれ 〳〵に心さひしきまゝにしの御たうへ参り 御らんすれはまことにたつとくありかたき ていなりあみたふつをすへたてまつりはな かうをそなへわきにはひわことたてをきたる を御らんしてめつらしくおほしめしひわを ひきよせさもおもしろくあそはすひやうゑの すけはことをひき給ふさうまのすけはしやう をふき給ふしきふの太夫はよこふえなりま ことに雲井をひゝかしてふきたまへりふん しやうかうちのものともこれをきゝてせん なきあき人を御たうへまいらせ給ひてかき かへをやふり候やらんひゝきわたり候と申け れはふんしやうはらをたてふしきの事かな ほとけをこそおかみ給へと申つれみな〳〵 おひ出せよといひけれは女はうともゆきて みれはおもしろくてとくまちてみるほとに 十人廿人ゆくほとにこと〳〵くゆきけりそ のときふんしやういひけるはきやつはらは なに事有て御たうへうせたるそとてゆ きみれは二三百人のものともかみな〳〵庭に なみゐたりふんしやうみてをのれらはな に事にかくはあるそとてつえをとりあけ てうたんとしけるかかくのをとみゝにいり けれはつえをすてあきれたるていにて御 たうのうちへいりてくわんけんをちやう もんするまことにおもしろくしゆせうなる 事は身のけもよたち有かたき事かきり なしふんしやう申けるはあはれつね出かゝ いますこしわかく候はんにはひわなとならひ まいらせんものをたゝいまのちやうもんに つみもきえいきなからしやうとへまいりたる 心ちこそしまいらせ候へとてなのめならす におもひけりこれほとたつときにひきて もの申さんとてさま〳〵ひき出ものをそま いらせけるさてもひめ君はありしすゝりの したなりし文のゝちはひとしれに御心に かゝりおはしましけれともいひかよふへきた よりもなしふみの色事もせはやなとゝ おもひ給へとも此まへのこくしよりもおと りたる人にてもやあるらんと人にわらはれ ゐへけれはよろつおもひみたれて母うへに申 させ給ふやうはあき人たちのひき給ふこと ひわめつらしきことをちと〳〵きかまほしさ よひわなとすくれたるよしいかくしてきか はやと申たまへは母上屋かてふんしやうに かたり給へはふんしやう我もさやうにこそ おもひ候つれとてとをさふらひにまいりて 申けるはとのはらたちひとひのやうに くわんけんとやらんおもしろきことみさせ 給ふへしつねおかゝあるしにて候ものちやう もん申たきと申候といひけれはをの〳〵 きこしめしてさためてひめ君たちにきか せんとの事にてあるらんとおほしめして こんとはひきつくろひて御たうへまいりた まへはひめ君たちもこゝをはれとしやう そくをき給ふ女はうたちそのほかはした ものまてもとくをはれとうつくしくはな をかさりたるやうに出たつもなか〳〵申 にをよはす御たうなとはまことにたまを みかきたるやうにかゝやきとくらくしやう ともよそならすいよ〳〵やさしくしつろひ てふんしやう北のかたをさきとして二人の ひめ君たち女はうたちをひきくして御 たうへいり給へる有さまなとすへてゐ申 人ともおほえす御心にくきふといにてたき ものなとはにほひみちみやこの心ちしていとゝ 御心もそらにあくかれ給ふあはれかやう のおりふしいかにもしてひめしのすかた をも見はやとおほしめしけりさて中将との いつより御心をすましひわをひきたまふ おもしろさ申もなのめならす身にしみ わたり心もそらになりとしかたゆくすゑ のことをもおほえすまことにちうかしやう殿 みすのうちはかり御心にかけあはれねこ のひきつなもかなとおほしめし給ふ御かほつき 御まなこさしうつくしくおはします事筆 にもいかてつくすへき扨もちうかしやう殿 はいかならん風のたより岩かなひめ君を ひとめみんとのみおほしめすまことに神仏 もあはれとおほしめしけるか風のふきあけ たるみすのひまより 御らんしけれは ひめ君に 御めを見あはせ 給ひ けり さてもみやこにてきゝをよひしよりはま さりてうつくしくそみえさせ給ふかんの りふしんたうのやうきひもこれにはい かてまさり給ふへきとおほしめす中将殿 をはしめたてまつりひわことをかきあはせ ものゝねもまことに雲井をひゝかし給へ はけんふつのきせんはうんかのことくなみ ゐてよのうきこともみな〳〵わすれはてゝ ちやうもんをそしたりける扨くわんけん すきけれは人々もかへり給ふちうしやうとの 覚ひめ君もたかひにひとし礼すおほしめす いかにしてかたよりのあらんとおほしめし けるちうしやうとの其夜をすこさんことも たえかねてみな人しつまりてのちひめ君 の御かたへ忍ひいりてきゝ給へはひめ君も ちうしやうとのゝひるのおもかけくわんけん の事わすれもやらすおとゝいかたりゐた まひて御かうしをあけて月のくまなきを 御らんしてかいふし給ふちうしやうとのは しのひより給ひてすゝりのしたの文の事 御たうにてめを見あはせ給し事なとをへ たてなくかたり給へはいもうと君えよに あはれにそおほしけるさてちうしやう殿は わかおほしめす御心をしるへにて八えこゝ のえのうちなれとも御心のまゝにうちへ いらせ給ひけるいまたおとゝいなからねいり 給はねはれいならすおのこのけしきのみえ けれはいもうと君はもしかの人にてもやあ かならむとおほしめしておくのかたへいらせ たまひけるちうしやうとのは姫君のかたはら にそひふし給ふひめ君もかの人よとこゝろ えなからいつしかおそろしくはつかしく またはあさましゝさるへき人をきらひあき 人にちかつれよるましきよしをはしたな くのたまへはちうしやうとのもことはりに おほしめしなからみやこにてしふのくらん とかゆかたりせしはしめより今まて御心を くたきつくさせ給ふことをかきくとき給へは まことにあはれさはよのつねならすひめ君 おほしめすいやしきものゝはかなきにはかく ることをしり給はて我父のふるまひさそな れ〳〵しかりつらんとむねうちさはきおほ しめしけるさてちうしやう殿はとし月 御身をつくさせ給ふかひ有てたかひに あさからすかたらひ給ふなにしおふ秋の夜 なかきころもあふ人からのならひにてつと なくあけけれはかなしくおほしめし こひ〳〵もあふ夜は煉もみしかきに 月はつれなくのこるありあけ ひめ君うちわらひて かすならぬ身は煤の夜のみしかきと おもひもあへすしのゝめのそら といひまきらかしたる御有さますへて文 しやうかにといひかたくやさしきていなと まことにみやこにてやことなき人々のかす 〳〵をみつれともかほとなる人はなしいとゝ むつましけにおはしましつゝすてに夜もあ たゝれはたちかへり給ふさてまたくれを まちえてしのひわたりたまひけりいよ〳〵 たくひなくおほしめし天にあらはひよ くの鳥 地に あらは れんりの えたと ちきり 給ふ □□□□□□□□ 四日目、日田田信濃守様 さるほとにあこきかうらのならひにて給ふ とすれと人めしせけれはみな人さゝやきあへ り母このよしきゝつけてさしも人々のおほ せられしをはきらひて行忠もしらぬあき 人をむこにしたるくちおしさよ此事くに うちにひろうなきさきにかのあき人にそへ てはやくおひうしなふへしとてはらをた たられけるそのときふんしやうにてなに 事そといひけれは御身のいとをしか案て そんなきあき人をゝきてむこに成ぬる口 をしさよあひする人もむすめをもくして出 よといひけれはふんしやうまことにあさまし くおもひなからいかにやひめ君はさそやさやう のことのあるへきかやさためて人のいひなし にてあるへきそきゝもさためぬことをさの みないひ給ひそやたどひさ有とても世 にあるならひ千年万ねんといひあはする もわかれあからさまなるもそひはつるはえ むのならひなりとにかくにまつ〳〵をん みつし給へとそいひける去ほとによにかく れなけれはふんしやうもとにこそ京あき人 をやしなひてくわんけんをさせてちやう もんしけるかむこに成たるよしをさたする ふんしやうおもひけるはいかなる人にてあれ はこれほとまてうつくしくあるたとひ なにゝてもあれかほとうつくしからむをは いかてをろかにとふへき大くうしとのさへ しらせ給はすはよの人〳〵はなにともいへむ こにもちゆへしとそ思はれけるさるほとに 大くうしとのはふんしやうかもとに京あき 人のあるかくわんけんなとことのほかしゆ せうなるよしきゝ給ひてくわんけんちやう もんせはやときんたち五人なからくして われはとしにてみな〳〵ふんしやうかもとへ そおはしける大もんをいりてすてに御 たうのしやうめんをあけさせ給へはちう しやうとのをみつけまいらせて大くうしとのは 御としよりころひおち給ひて夢うつくと 覚おほえ給はすさて〳〵みやこにはてんかの 御子二ゐのちうしやうとのうせさそ給ふとて くわ〳〵くまもなくたつねさせ給ひつる にこのくにてまし〳〵けるをしりまいらせ さりつることのあさましさよとてあきれた まふをみてふんしやうはしうのとしより ころひおち給ふにありてさはきみれはひやう 衛のすけたち出ていかにさたみつめつうし やちかくまいれとのたさへはふんしやうきも たましゐもうせていそき我家にはしり かへりをの〳〵は京人そかたしけなくもちう しやうとのはあきひとよ上らうはむこ殿よ むことのはあき人よちうしやうとのよこ くちにまかせて申けれはこれはいかなる 事そとて人々御たうへまいりて見まい らせけれは大くうしとのは大庭にかしこまつ てかうへを地につけてゐ給へはかのあき人 たちこのほとこれに有つるもへちのし さいにあらすとてとし月の事ともつふさ におほせきかせ給へはなか〳〵の御ことに こそとて大くうしとのは御こと葉もなく まつふんしやうをめしておほせけるは扨も しらすやこのころみやこにとえ給ふ松とのこ てんかさいあひの御にに二ゐのちうしやう とのにてわたらせ給ひけるそ しり まいらせさりし あさまし さよと おほせ ける □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ク ふんしやうこれをうけ給はりきもたましゐ もうするこゝちしてうつゝともおほえ御たゝ 夢のやうに有けるかさても〳〵たゝあき 人とおもひまはらせつるにさてはをとにとく 給ふてんかの御子にてまし〳〵けることの けれしさよとおもへはせんかたなくてまた 家にかへりて申けるはさてもてんかの御子 はむことのそやあき人はてんかの御子そかし てんかの御にのつまはひめ君よ我むすめ のとのはちうしやうとのよあき人よむこ殿 よとて物くるひのやうにはしりまはりのゝ しりけるさて大くうしとのはおほしめすこれ に此まゝ御さあるへき御ことはみやこへの御 聞えもしかるへからすやかてしゆくしよへ くしたてまつらんとおほしめしみつから御こ しをかきたてまつり給へりきんたちもを の〳〵御てをかけ給ひて秋しゆくしよへて したてまつり八十国の大みやうしゆへふれ 給ひけれは大みやうたち我も〳〵とまいり あつまり給ひてみちはせきあへすみな〳〵 大みやうたちおほしめす扨もめてたきさ いはひをひき給ふ人にて我らをきらひた まひける物かなと申されけるさてちうしやう とのはかくけおはしますへき御ことならねは 今はひめ君をくしてみやこへのほり給ふ へきとの御ちやうなれはをの〳〵出たゝせ給ひ けりふんしやうかしうの上らうをも御と もなりそのほか国中の大名小名残りなく 御ともなりかゝるめてたきふんしやうかな とうらやまぬものはなかりけり 同断 さてもてんかの御子をむこにとりけれは あなたとなたの上らうたちを申つけやと ひなとしてむすめのともをさせつるふん しやうかくはほうのほとまことに一世ならぬ 事なりかくてめてたき中にも文しやう ふうふはこのひめ君たちをかたときみねは 千年をもふるとゝちするにたゝいまはな れまいらせては我らふうふのものはなにと なるへきそやとなけくもことはりなりし かれともこれほとよに有かたきことなれは ちからをよはす四はうのくらなるたから物 ともはいつのようそとて御としのかなもの はとかねにてかさりけるいつれの御たうく をもみな〳〵とかねにてしたてけるいつく しきともなか〳〵申はかりもなかりけり さて三月十日ころにみやこへつかせ給ひ てやかて御つかひにててんか母上のかたへ 申させ給ふなにとなく世の中あちきなく てそゝろにひとしれすみやこをうかれ出る にとうとくのかたをしゆきやうしてある きて候へはなにとなくふしきなるかたに候 てこの二三ねん行ゑもしらせまいらせ候 はていかにうらみもふかく御さめやさりな から御ふしんあるましきにて候はゝさいら せ候へしと申させ給へはてんか北のまん所 哥のやうにおほしめしさていかなるものこ 子なりともわか子のみんするものならは いかてかをろかに思はん此二三ねんか間 はさてなにとやなり給ふらんとおもへは よもすからまとろますあんしくらしつる にさやうに心につきたることの候てあり つることのけれしさよとく〳〵いれまいらせ よと有けれはちうしやうとのなのめならす おほしめしけりさてひめ君の御きぬにゑい かさねのからきぬさくらのこうちきくれ なゐのはかまたをやかにきなしたさへる 御すかたなとはけたかくをくれたるところ もなくまことにめもをよはれす筆にも いかてつくすへきひかりなとゝはこれをそ いはんすらんとおほふしつゝてんかきたの まんところへまいり給ふかみのかゝりなとは あをやきのいとを春風のふきなひけたる よりもうつくしくかたちは秋の月とき山の うすきりのひまよりほのかにみえすかたは 春のあけほのに咲みたれたるいろかなり 御としのころは十四五はかりにそみえさせ 給ふまゆひたいつきなとはあいきやうつき たさへる有さまはいはんかたなし北のまん ところめをおとろかし給ふやことなきみや たちもかほとなる人こそましまさねちう しやうわりなく思ふもことはりなりわれ さへいまよりすこしみすはゆかしくおもふ へしちうしやうの心のうちをしはかられ たりとそのたまひけるてんかおほせけるは よし〳〵いかなるいやしきものなりとも おとこのならひ我子の心のつくものこそ うれしけれとてあまりなるほとにかし つき給ふさて大くうしとのにはひたちの国 のこくしをたひ給ふときはの女はうもおり ふしほんりやうのそせうにてとし月ふる にこのたひ御とも申のほりて思ふまゝ にほんりやうあんとして かさねて しよりやう 給はりて めんほく かきりなく てこそ くたり 給ふ これもひめ君の御いくわうなりかくて中 しやうとのはうちへまいり給ふ此とし月の いふせきすまゐともこま〳〵とかたりたまひ けりさるほとにちうしやうとのは中納言 に成屋かて大しやうに成給ふ此事みやこ にかくれなけれはみかときうしめしくやかて 大しやうとのに御たつね有けれははゝかり なからはしめよりのことゝも申させたまへは ふしきにめつらしき事ともなりさやかに うつくしきいもうとをもめさんとてせんしを 下されけるふんしやうかしこまつて申ける はあねをこそちからなくのかれかたくてま いらせ候へひとりをはなして急しきときは このいもうとをみてこそなくさみあねの 恋しさもすこしはわすれ候へきなにとひとも えまいらせ候ましきよしを申けれは御つ かひこのよしかくとみやこへ申上せられけれ はくきやうせんきめつてさらはちゝはゝ ともにめしのほせよとのせんしくたり けりされはよき子をもちゐれはその身を かへすしてめんしやう七十にてさいしやう のちうしやうになるこそふしきなれさ ていもうとひめ君はみやこへつき給へは ひたちの国のかみの大臣の御子にしたて まいらせて女御にまはらせ給ふみかと御ら むしてさてもゐ中のはてにもかゝる人も 有けるか此世の人にはあらしたゝ天にん のやうかうかとそおほしめしける世にたく ひなく聞え給ひやかてきさきにたち給ふ れいならすなやみ給ふせいりやうてんの ゆかにふし給ふ御いはひめてたくて御 おひなとまはらせ給ひて御母のもとへ出さ せ給ふみかとはひとりおはしまして御つれ〳〵 もたえかねてそ見えさせ給ふ御文はかりそ かよひけるふんしやうみすのきはまてま いり御こゑなりともうけ給はりたきよし 申されけれはわたくしにてはいかゝとてう ちへ申させ給へはくるしからすとのちよく ちやうなりふんしやうなのめならすよろ こひみすのきはにておかみておもふやうい かてわか子とおもふへきそや神ほとけより もなを有かたくこそおもひまいらせけれ さてきさき月日かさなりて御さんやす 〳〵とわうしいてき給ふいまたわうしまし まさねはみかと御心のうちにひとしれす おほしつるにいまは御うれしさかきりなく おほしけり御ちつけにはくわんはくとのこ 北のまんところまはり給ふまことにめて たき御事ともなか〳〵申はかりも なかりけり ③ ⑦ KI またあくるとしひめみやいてき給ふ大臣 とのくわんはくをもち給ふこれもわか君 をまうけ給ひてうちの御もてなしにも おとり給はすめてたくそおはしましける わうし七さいにて御くらゐにつきたまふ さいしやうはいまのみかとの御おうちにて ましませはいかてかしるしもなかるへきと て大なこんに成給ふいやしきふんしやう なれともくわほうあれはしやうをもかへす めてたき事ともなり御母御せんは二位に あからせ給ふ御ふたところなから御とし百 さいをたもちておはり給へはかゝるためしは さらになしきさき北のまんところも御ね 百二十ねんをたもち給ひてのちこくらく しやうとのひとつはちすのえんとならせ 給ふふんしやういかはかりおこなひたまへは かゝるめてたきくわほうなるらんと うちやまぬ人は なかり けり